ウォーエンブレム&シルバーチャーム 性格まるで正反対

[ 2019年7月23日 11:00 ]

オールドフレンズ代表のブローウェン氏とウォーエンブレム
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 今週から札幌・新潟・小倉開催がスタート! 本格的な夏競馬が到来する。夏と言えば懐かしの名馬を訪ねる大好評の恒例企画「純情牧場巡り 君に会いたい」。第1回はウォーエンブレム&シルバーチャーム。かつては日本で種牡馬として活躍した2頭のケンタッキーダービー馬を、米国のオールドフレンズに訪ねた。

 米国で唯一の功労馬繋養施設として知られるのが、ケンタッキー州のオールドフレンズだ。03年に開場。15年には競馬界への多大な貢献が認められて、エクリプス賞の特別賞を授与された。創設者で現代表のマイケル・ブローウェン氏は「小さい頃から競馬は好きでした。仕事がひと段落した時、馬に関わる仕事がしたいと思い、牧場をつくりました」と語る。

 日本で種牡馬経験のある馬ではオジジアンやカリズマティックが終の棲家としたが、現在はウォーエンブレムやシルバーチャームが余生を過ごす。ウォーエンブレムは北海道の社台SSで種牡馬となったが、特定の牝馬にしか興味を示さないなど、気性面の問題を露呈。少ない産駒から多くの活躍馬を送り出したものの、15年に種牡馬を引退し、アメリカに里帰りした。訪れた日は黙々と草を食んでいたが、ブローウェン氏は「今は蹄葉炎が痛くて大人しくしているけど、普段はこんなもんじゃないです」と苦笑いで明かす。

 「人とのコミュニケーションの取り方が噛むか蹴るかしかなくて…。去勢の効果がなく、私たちもまだまだ気を抜けません。このあたりの放牧地のボス的存在でもあります。この馬に最初に会いに来たのは、日本の仙台の女性でしたね」

 シルバーチャームは05年から14年まで日本で種牡馬として過ごした後、オールドフレンズに移った。ブローウェン氏は「性格はウォーエンブレムと正反対ですね」と笑みを浮かべる。

 「彼はオールドフレンズ史上、最も賢い馬かもしれません。訪れたすべてのファンに対し、優しく熱心に“対応”してくれていますよ。2月の25歳の誕生日パーティーを開いた際には200人以上のファンが集まったんです」

 広々とした放牧地は見た目に美しく、馬にとっても理想的な環境と言える。

 「2頭とも、元気に“定年退職後”の生活を楽しんでいます。ぜひ、日本の皆さんにも会いに来ていただきたいですね」

 入場料は15ドルで、ガイド付きツアーが好評。事務所ではオールドフレンズに所属する名馬の帽子やポストカードが販売され、売り上げは馬に還元される。近年になって、日本でもサンクスホースプロジェクトなど引退馬の行き先を見つけようという動きが広がりを見せている。ただ、こういう分野で日本は後進国。一つのモデルケースとして、ここに見習うべきものがあるだろう。馬を愛する人による、馬と馬を愛する人のための楽園。いつの日か“日本版オールドフレンズ”が誕生することを心待ちにしたい。

 ◆オールドフレンズ ボストングローブ紙で映画担当記者だった現代表のマイケル・ブローウェン氏が03年に創設。米国の馬産の拠点である中東部のケンタッキー州に136エーカー(55万平方メートル)の敷地を擁し、牧場スタッフ8人と事務所スタッフ6人の下、129頭が暮らす。ブルーグラス空港、及び空港に隣接するキーンランド競馬場から車で約15分。

 ◆ウォーエンブレム(セン20)1999年4月10日生まれ。父アワエンブレム、母スウィーテストレディ。米国生まれ。現役時代は13戦7勝。総獲得賞金は349万1000ドル。3歳時にケンタッキーダービーとプリークネスSを制したが、ベルモントSは出遅れて8着に終わった。引退後は北海道の社台SSでスタッドイン。気性的な問題で種付けに苦労したため、119頭の産駒しか残せなかったが、その中からブラックエンブレムやローブティサージュなどの活躍馬を輩出した。

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