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奇跡の馬ナリッシュ“命のリレー”で安楽死寸前から繁殖牝馬へ

牧場への出発前日、ナリッシュを中心に記念撮影。右から菊池獣医、石川獣医、平田師、古谷助手、金井獣医(古谷助手提供)
Photo By 提供写真

 5月12日の京都競馬2Rで左第1指節種子骨複骨折を発症して4コーナーで競走中止した平田厩舎のナリッシュ。安楽死寸前の3歳牝馬の命を救ったのは熱きホースマンたちだった。未来へつなぐ繁殖入りを目指しての“命のリレー”を追った。

 力尽きかけた命が、多くのホースマンの“リレー”で助かろうとしている。平田厩舎に所属していた3歳牝馬のナリッシュ。アクシデントが起きたのは5月12日の京都2R・3歳未勝利戦だった。後方からの追い上げを図った勝負どころで左第1指節種子骨複骨折を発症して、4コーナーで競走を中止。本来なら安楽死処分となる重傷だったが、“何とか命を助けたい”という関係者の総意の下、その日のうちに栗東トレセンの自厩舎に帰厩。馬房での112日間に及ぶ闘病生活が始まった。担当の古谷助手が振り返る。

 「靱帯が切れて、種子骨は3つに割れて…。球節が本来の形をしていませんでした。当然、最悪の結果を覚悟しましたが、獣医さんからは『助からないこともない』と言われたんです」

 栗東トレセンの競走馬診療所では“チーム・ナリッシュ”が結成された。石川裕博診療課長(46)は「最初に見た時に“厳しいな”と思いましたね。左前脚だけじゃなく、負担がかかる反対側の右前脚が蹄葉炎(ていようえん)になる恐れもありました」とかみしめるように回想。その上で、少し嬉しそうに続けた。

 「何が一番凄かったかと言えば、担当の古谷君ですね。3カ月間、カイバの量をうまく調整して、ガレさせることなく健康を維持させてくれました。それが脚にも良かったんでしょう」

 古谷助手は担当の2頭に加えて、ナリッシュの世話も続けた。そんな苦労をおくびにも出さず、ただただ愛馬の頑張りを称える。

 「何が凄いって、ナリッシュの精神力です。馬房から出られない日が続いたのに、ストレスで腹痛を起こすこともなかった。食欲があったから体力が落ちなかったんでしょう。最後まで大人しく、賢い馬でした。牧場に帰る日は馬運車に乗って、栗東インターまで付いて行ったんです。さすがに最後は涙が出ましたね」

 9月1日に栗東を出発して、2日に生まれ故郷の北海道日高町・ナカノファームに無事到着した。3日には平田師が牧場を訪れ、病状を説明。病との闘いは一つの局面を打開したが、とはいえ決して終わったわけではない。「繁殖に上がっても乗り越えないといけない壁がたくさんあるけど、何とか元気な子どもを生んでほしい。もし子どもを担当することができれば本当に嬉しいですね」と古谷助手。ナリッシュの子どもが競馬場を走り、母が立つことのできなかったウイナーズサークルで祝福される日を心待ちにしたい。

 ○…関係者の努力で命がつながり、その血が後に花開いたことがある。91年の英国ダービーを制したジェネラスの半妹シンコウエルメスは、96年に藤沢和厩舎からデビューしたが、2戦目に向けた調教中に重度の骨折。安楽死も考えられたが、藤沢和師の強い希望で手術されて後に繁殖入り。孫の代で16年の皐月賞馬ディーマジェスティが出た。

 ▼ナカノファーム・中野富夫代表 1カ月ぐらいは舎飼いが続くと思いますが、エサをよく食べているし元気です。脚元と相談しながらですが、早ければ来年の種付けを考えています。サンデーサイレンスの血も遠くなってますし、できればディープインパクト系の種牡馬を付けたいですね。

[ 2018年9月14日 13:26 ]

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