【日本ダービー】フェノーメノ蛯名 20度目の正直

[ 2012年5月25日 06:00 ]

<日本ダービー>青葉賞を勝った勢いでダービーを狙うフェノーメノと蛯名

 夢に見たタイトルへ。3歳馬7572頭の頂点を決する「第79回日本ダービー」の枠順が24日、確定した。20回目の騎乗となる蛯名正義(43)が初制覇を託すフェノーメノは6枠11番。青葉賞馬はダービーを勝てないジンクスを破って名手が悲願をかなえる。同レースの馬券は25日、ウインズ新橋、後楽園で金曜発売される。

 誰よりも「ダービージョッキー」の称号を渇望してきた。今年が20回目の挑戦となる蛯名。敗れた19回はスタートからゴール、細部に至るまで鮮明に覚えている。脳裏に焼き付いて離れなかった。参加するだけで胸が熱くなる一戦。その表彰台に立ちたいと、ずっと思い続けた。

 特別なこだわりがある。ダービー直前といえば、デビューを控えた2歳馬の調教もピッチが上がる時季だが、蛯名は調教を頼まれても断ってきた。「ダービーが終わるまで待っていただけませんか」。頂点を決する戦いが目前に迫っているのに、2歳馬が目指す翌年の頂点なんて考えられなかった。

 蛯名「今年から2歳戦が早く始まるからそうも言っていられないが、1年の起点はダービー。僕にとっての元旦。ダービーに出ることを1年間のモチベーションにしているんだから」

 蛯名が初タイトルを託すパートナーはフェノーメノ。トライアル・青葉賞で中団から雄大なストライドを伸ばし、直線で突き放して2着馬に2馬身半差つけて圧勝した素材だ。初騎乗だったが、その非凡な資質は手綱を通して馬上へとしっかり伝わった。

 「フワフワと遊びながら走っているのに行き始めると凄い脚を使う。オンとオフを使い分けられる。実は(他馬とは)力が違うと思って安全な乗り方をしたが、それでもゴール前で余裕があった」

 デビュー戦から前々走・弥生賞までのリプレーも見直した。東京で3戦3勝と完璧な成績を残しているが、中山では2戦して7、6着。その理由をつかんだ。

 「体も跳びも大きいから、器用さが求められる中山より、伸び伸びと走れる東京向き。追って追っていいタイプだから東京はベストだ」

 皐月賞の上位組とは初対決。青葉賞組はダービーを勝てないジンクスもある。

 「ゴールドシップは皐月賞のステップレースを使わずに勝った。過去に例のないケースだ。ワールドエースは発走後、つまずいたのに2着。物凄い強敵だ。でも、競馬はやってみなければ分からない。青葉賞のジンクスだっていつか破られるんだよ」

 逆転の夢を後押しするのはパートナーの眠れる能力と上積み。

 「もっといい脚を隠し持っているんじゃないか。青葉賞で、そう感じた。追い出してからモタつく面もあった。久々を使った今回はギアも早く入る」

 柴田政人(現調教師)が夢をかなえたのは19回目のダービー。蛯名が勝てば記録を塗り替える。まさに悲願だが、蛯名は月並みな言葉を口にせず「楽しんでくるよ」と笑った。獲れなかったからこそ、その重みを誰よりも知る。20回目でついにかなえる夢。手応えはある。

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2012年5月25日のニュース