【ダービー】ダービートレーナーへ執念の2頭出し

[ 2009年5月31日 06:00 ]

 ホースマンにとって最高のタイトルが「ダービー」。96年ダンスインザダーク、04年ハーツクライと2度2着に惜敗している橋口弘次郎師(63)。今年はリーチザクラウン、アイアンルックの有力馬2頭出し。その期待度は?ダービーへ懸ける、胸の内を直撃した。

 ――今年もダービーウイークを迎えた。
 橋口師 ダービーに管理馬を送り出せることは本当に幸せだ。しかも今年は2頭出しで2倍楽しめる。こんなに幸せなことはないね。
 ――毎年「ダービーデーは競馬関係者にとってのお正月、お祭りだ」と話していた。
 そう。今年もダービーのパドックに立てる。これはうれしいよ。ダービーのパドックは雰囲気が違う。有馬記念も及ばないね。「ダービージョッキー」とは言うが、「有馬ジョッキー」とは言わないでしょう。ダービーとはそれだけ重いものだと考えている。
 ――今年2頭を出走させれば16頭をダービーに送り込んだことになる。これは現役調教師で最多。ダービーへの執念を感じる。
 たくさん出走させてきたが、出すだけでは自慢にはならない。やっぱり勝たなければ。
 ――最も勝利に近づいたのは96年ダンスインザダークと04年ハーツクライの2着だった。
 ダンスインザダークは手応え十分で送り出した。負ける気がしなかった。そんな気分になったのは、あの馬1頭だけ。敗戦が悔やまれるなあ。ハーツクライは皐月賞で惨敗(14着)していたし、当時は未完成だった。それでも頑張ったから、やはり素質はあったと言うべきだろうね。
 ――今年の2頭も魅力はたっぷり。リーチザクラウンから手応えを聞きたい。
 ハマれば次元の違う競馬をする一方、モロさも同居している。皐月賞では高い人気を受けながら2ケタ着順。悪い面がすべて出てしまったね。あの惨敗を受けて、すぐメンコを着け始めた。レースでも着けるつもり。普段はそんなにイライラする方ではないが、着用しないよりマシだろうと思っている。
 ――果たして逃げるのか、作戦面も気になる。
 位置どりは今のところ全然考えていない。ゲートが開いてみなければ分からない。ジョッキー(武豊)も同じ気持ちだと思うよ。どうしたら力まずリラックスして走れるかだろう。勝つか、ビリか。中途半端な着順はないんじゃないかな。
 ――アイアンルックは末脚が魅力だ。
 前走は不利が大きかった。度外視していい。思い通りの位置に付けられる自在性があるし、いい末脚も持っている。距離にも対応できそうで、自分の競馬ができれば楽しみ。それに、この馬はカイバをモリモリ食うんだ。いっぺんに食い上げてペロリだよ。頼もしいね。調教もビシビシやれるし、走る馬は食うんだ。ダンスインザダークもハーツクライも食欲は凄かった。
 ――2頭の坂路の併せ馬は迫力があった。
 内容は良かったね。アブミが当たるくらいに接近しろ、と指示した通りの走りだった。イメージ通りだったね。
 ――最後に意気込みを。
 今年は意気込まない。意気込んで勝つならナンボでも意気込むが、そうではないからね。自然体で臨むよ。まあ、皐月賞は苦い思い出ばかりだった。ザッツザプレンティもハーツクライもさんざんだった。でも、どの馬もダービーでは巻き返してくれた。今年もそうなってほしいと願っているよ。望みを持てる2頭だし、今年もダービーデーに府中にいられる喜びをしっかり味わおうと思っている。
 ▼橋口 弘次郎(はしぐち・こうじろう)1945年(昭20)10月5日、宮崎県生まれの63歳。九州産業大卒業後、佐賀競馬の騎手を経て、71年吉永猛厩舎厩務員に。調教助手を経て80年調教師免許取得。92年天皇賞・秋(レッツゴーターキン)を皮切りにG1・7勝、重賞73勝。06年にはドバイシーマクラシック(ハーツクライ)、ゴドルフィンマイル(ユートピア)も制した。

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2009年5月31日のニュース