「ホレるな」と言いながら一番馬にホれていた人

[ 2009年4月13日 06:00 ]

 【境勝太郎さんを悼む】調教師の引退を控えて本紙でコラムを書いてもらうことになった時のことだ。

 タイトルをどうするか、境さんは照れくさそうに「馬にホレるな、はどうかな。ちょっとキザか…」と切り出した。境さんは長年のホースマン人生で、常にこの言葉を戒めにしてきた。馬にほれちゃいかん、おまえさんだって馬券が当たらんのはそのせいだ、と何度も説教されたものだ。そのくせ、サクラユタカオーやサクラチヨノオー、手がけた優駿が現役のころは、洗い場につながれている馬を見やりながら「どうだい、これほど素晴らしい馬は世界の果てまで行っても見つからんよ」と自慢話に花が咲いた。
 馬にほれることに関しては境さんが一番だった。そのための失敗も多かったのだろう。ホースマンとしての大いなる教訓を残し、サクラの勝負服をこよなく愛した人が桜花賞の日に旅立った。これからは気兼ねすることなく、とことん馬にほれてください。(レース部専門委員・桜井 裕夫)

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2009年4月13日のニュース