近江谷太朗 舞台「エンドゲーム」主演 オーディション勝ち抜き「頑張らねばともがいています」20日開幕
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俳優の近江谷太朗(60)が、東京・新国立劇場小劇場で20日に開幕する舞台「エンドゲーム」(~31日)で主演を務める。演出家で新国立劇場演劇芸術監督の小川絵梨子氏によるフルオーディション企画で1016人の応募から出演者4人に選ばれた。近江谷はキャスター付きの肘掛け椅子に座った盲目の男・ハム役で「開幕直前の今ももがいています」と熱演を誓った。(松尾 知香)
――舞台「エンドゲーム」はすべての出演者をオーディションで決定する「フルオーディション企画」の第8弾で、小川監督の任期満了に伴い、今作が最終作品となります。近江谷さんがオーディションに参加した経緯を教えてください。
「この新国立劇場のオーディション企画はずっと気になっていました。オーディションは年に1回のペースで行われていましたが、作品や自分に合う役があるかどうかチェックしつつ、スケジュール的に無理だという年もあったんです。今回のオーディションの前の年に初めてオーディションを受けることができたんですが、1次でポロッと落ちたんです。“くそー!来年も受けてやる!”と心に誓いました。特に今回は最後のチャンスかもしれず、しかも芸術監督の小川さんが自ら演出をしてくださるということで、絶対受けようと思っていたんです。小川さんの演出された舞台は何度か見ていて。小川さんが演出された作品はクオリティーが高く、いつか小川さんの演出を受けてみたいと思っていました。役者って基本オファーを待つしかないことが多いけど、今回のオーディションは大チャンスだ!気合い入れて挑みました」
――ノーベル賞作家サミュエル・ベケットの傑作戯曲「エンドゲーム」。4人の登場人物が終末的な状況下でシェルターに閉じ込められ、絶望的な日々を送り続ける…という不条理劇です。オーディションに参加するにあたって、事前に準備などはされたのでしょうか。
「実は、オーディションを受ける前に『エンドゲーム』の戯曲を読もうと思って、図書館で予約したらまだ貸し出し中で。待てども来ずで、あれ?と思っているうちにオーディションになってしまったんです。でも、1次は違う作品を使った選考で、しかもそれが二度観に行った大好きな作品で。それがとりあえず1次で良かったです。次はいよいよ『エンドゲーム』の抜粋したシーンが送られてきました。ぶっちゃけ、事前にネットで調べたあらすじ、感想などを読んで、こんな雰囲気の作品なんだと勉強した程度。稽古中で原作をじっくり読んでいる余裕もなかったので、もう当たって砕けろ!的な感じで。与えられたテキストをもとに、いかに自分なりにやれるかで勝負しようと思ってやったのが、逆に良かったのかもしれませんね」
――芸歴37年目となる近江谷さんですが、今回のオーディションでは緊張されましたか。
「それが、全然緊張しなかったんですよ。開き直っていたところもあるのか、別の舞台の稽古中であったまっていたおかげなのか。どんなオーディションでも大抵緊張するんですけど、まったく緊張しなかったんです。(オーディション合格の一報は)うれしかったですね。舞台の本番期間中に分かったので、スタッフや共演者がみんなワーって…自分より喜んでくれてうれしかったです」
――小川監督からはどんな言葉をかけられましたか。
「稽古の始めの方で、出演する4人それぞれに“オーディションではこうでした”というお話をしてくださって。その時に“ハムがいた!”みたいなことを言っていただきました。どの部分で感じてもらえたのか分からないんですけど、めちゃくちゃうれしかったです」
――近江谷さんが思うハムとはどんなキャラクターですか?
「強欲でわがままな王様…ですかね」
――役作りで苦労した点を教えてください。
「稽古で“いい人に見えます”っていう指摘がありましたね。いい人ではない、むしろ残虐なふうに見えたいというオーダーをいただきまして…戦っています」
――劇中では、ハムと主従関係にあるクロヴ役・中山求一郎さんとの掛け合いのシーンが多くありますが、中山さんとの稽古を振り返っていかがでしたか。
「彼はスポンジが水を吸い込むかのごとくどんどん成長しているのが、目に見て分かります。やっぱり若いってうらやましいと思いながら見ています。彼は凄く優秀で、勤勉で真面目。本当に性格もいい。そういう人が相手役で本当に助かっています」
――稽古で苦労したことはありましたか。
「どんどん小川さんの演出プランが進んでいく中で、最初の頃は和気あいあいとやっていたんです。でも、劇場に入る段階になってきて“ああ、まだこんなに出来てないんだ”って。“やっぱり、ベケット手強いぜ”と戦いながらもがいています。稽古期間は2カ月ほどだったんですけど、1年前にはもうすでに台本ができていて。去年のうちに2回本読みをしました。なんなら稽古が始まる前、顔合わせの前に1回本読みがありました。さらに共演する3人と何度も顔を合わせているうちに、じゃあうちで本読みやってみる?みたいなことになって。全員は揃わなかったけど、来れたメンバーが本読みに付き合ってくれました。本当に素敵な共演者の皆さんのおかげで、今ここに生きることができていると思っています」
――入念に準備を重ねられたんですね。
「これだけ準備に時間をかけているんだから、知らず知らずの間に出来てんじゃね?みたいな期待もあったんですけど、思ったより出来てないぞっていう。なので、頑張らねばともがいています。(戯曲的にも)手強いですね。『エンドゲーム』は不条理劇と言われていて、こう来たからこうなりますっていう並びが必ずしも流れてはいなかったりするんです。だから迷子になりやすくて、役者にとっては凄く恐ろしい脚本なんです」
――15日と16日にはプレビュー公演がありましたが、手応えはいかがですか?
「『エンドゲーム』はお客さんを楽しませることができる面白い舞台なんだという手応えがあります。もっともっと面白くなるはずです」
――初日を控えた今の気持ちを聞かせてください。
「正直な気持ちを言うと、楽しみ半分ぐらいで。大丈夫か?っていう気持ちがあります。この不安をどんどん減らして初日を迎えたいです。知っている役者たちも見に来てくれて、“大丈夫だよ!”って励ましてくれました。その言葉を信じて、自信を持って舞台に立てば、きっと素敵な舞台になると信じています。もがいて先に進むぞっていうのが、ハムの本質の部分なので。そこが見えれば、意外と伝わるものがあるんじゃないかなと思っています」
――改めて、公演を楽しみにされている方々に向けてメッセージをお願いします。
「不条理劇が好きな方も、そうでない人でも楽しめる作品だと思います。小川さんの演出によってお客さんが受け止めやすいものになっていますので、ぜひ劇場にお越し下さい」
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