落語のおもしろさを教えてくれた矢野誠一さんをしのぶ
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【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】「落語歳時記」(文春文庫版)は記者にとって教科書のような1冊だ。著者は7月23日に虚血性心不全のため90歳で死去した演劇・演芸評論家の矢野誠一さん。「新年」「春」「夏」、中入りを挟んで「秋」「冬」と、季節感あふれる古典落語の名作を素材に、ふさわしい俳句を配して庶民の暮らしを生き生きと活写したエッセーで、小沢昭一さんの解説も味わい深い。亡くなって1カ月、今回は矢野さんをしのんでみたい。
1993年に始まったスポニチ文化芸術大賞の選考委員を長く務め、2006年には40年以上にわたる評論活動や精力的な執筆活動に対して自ら優秀賞も贈られた。そんな縁で、落語会や劇場でお会いする度、いろいろと教えていただいたが、とりわけ落語への愛情は深く、話を聞くのが楽しみだった。
寄席通いを始めたのは1947年、新制の麻布中学に入学してまもなくのことだったという。高座には八代目桂文楽、五代目古今亭志ん生、三代目三遊亭金馬らがいて、こう振り返った。
「とっても幸せと思うのは文楽、志ん生という2人を同時に聞けたことですよ。芸人が活動時期を身勝手に選ぶことができないように、客もその芸人に合わせて時代を生きることはできない。夏目漱石のいう“三代目小さん論”というのは、まさに至言であって、小さんよりちょっと先に生まれても後から生まれても出会えなかった。そういうことからいうと、僕は本当に幸せ」
目を細めて笑顔で語った言葉が耳に残っている。“三代目小さん論”とは、漱石が「三四郎」の中で、「小さんは天才である。あんな芸術家は滅多に出るものぢやない。何時でも聞けると思うから安つぽい感じがして、甚だ気の毒だ。実は彼と時を同じうして生きてゐ我々は大変な仕合わせである。今から須子と前に生まれても小さんは聞けない。少し遅れても同様だ」と絶賛したこと。さしずめ昭和後期から平成にかけては立川談志と古今亭志ん朝、今なら五街道雲助(77)と柳家さん喬(77)を同時期に聞ける喜び…ということになろうか。
穏やかな人だったが、講談の神田伯山(42)が松之丞時代の2019年に“事件”を起こした。5日連続同じお客さんの前で「慶安太平記」を完全通しで読むという企画に挑んだ松之丞に対し、矢野さんが初日だけ足を運んで新聞に酷評記事を寄稿。松之丞が抗議して起こったバトルだ。高田文夫さんの仲介で手打ちをしたが、こんな血気盛んなところもあったのかと驚いた覚えがある。
1969年に結成された俳句の同好会「東京やなぎ句会」の創立メンバーでもあった。他に九代目入船亭扇橋、永六輔、小沢昭一、江國滋、三代目桂米朝、大西信行、十代目柳家小三治、三田純市、永井啓夫の各氏がいた。次々と鬼籍に入り、小三治師が21年10月7日に81歳で逝って創立時のメンバーは矢野さんだけとなったため、同17日の句会を最後に「東京やなぎ句会」の名称を返上。矢野さんの死で創立メンバー全員が故人となってしまった。
「徳三郎」という俳号を有していた。小沢昭一さんは「落語歳時記」の解説の中で
「麦湯飲むかたちにひそむ育ちかな」
「機嫌よきひと揃いけり冬の夜」
「胡桃ありて夜ふけの熱き紅茶かな」
など、矢野さんの作品を紹介している。
ほかに
「地下鉄に下駄の音して志ん生忌」
「鰻屋の二階客なき焼け畳」
といった句もある。志ん生、そして「鰻の太鼓」が得意だった文楽を思わせるものだ。
今ごろは、あの世で再会した仲間たちと「天国やなぎ会」を結成しているだろう。
その文章や句に時代時代を精いっぱい泳いできた演者への深い愛情をにじませ、加えて「片隅で終わっちゃった人に一層興味がわく」とも話していた矢野さん。そんなちょいといい話がもう聞けないのが残念でならない。
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