【売野雅勇 我が道14】LP収録曲と思った「少女A」 目に浮かんだ中高時代に誘惑された美少女

[ 2025年8月15日 07:00 ]

中森明菜「少女A」のジャケット
Photo By 提供写真

 1981年5月に所属した事務所「マッドキャップ」から思わぬ仕事が舞い込んだのは、翌年3月のことでした。

 僕の担当ではない井上大輔さんのマネジャーから手渡されたのがワーナー・パイオニア(現ワーナーミュージック・ジャパン)が力を入れている新人アイドル・中森明菜のデビュー曲「スローモーション」のチラシ。第2弾アルバム用の作品を募っていると説明されました。

 元々洋楽好きで、シャネルズや伊藤銀次さんらの作品を日々楽しく書いていた31歳の僕は「アイドルなんてカッコ悪い。イヤだなぁ」と抵抗がありました。でも、その石黒裕さんというマネジャーから「プロでやり続けたいなら」と言われ、書くことにしました。

 アイドルの歌詞は難しいなと机に向かっていたら、もらったチラシの端にある「ちょっとHな美新人っ娘(ミルキーっこ)」という気持ちの悪いコピーに気が付きました。エッチという響きに、セクシュアルなにおいを感じ、当時16歳だった彼女の年齢から“早熟”という言葉にたどり着きました。

 ふと、足利市で過ごした中高時代を回想し、早熟な14歳だったある美少女の顔が浮かびました。浅黒い肌をした彼女に僕は一度だけ誘惑されたことがありました。危険なにおいがする美少女が“少女A”として報道される日が来るかもしれない。過去に感じた胸のざわめきを思い出した僕は、原稿用紙にフェルトペンで「少女A(16)」と書きました。

 タイトルはこれで決まった。これなら書くことができる。歌詞の提出期限まではあと2日。僕は過去にボツになった歌詞のことを思い出しました。

 それは渡辺音楽出版のディレクター・木崎賢治さんに「書いてみて」と言われ、沢田研二さんに書いた幻の作品「ロリータ」の歌詞。映画「ベニスに死す」から想を得たもので美少年・タジオの美しさの虜(とりこ)になる初老の作曲家の恋を描いたものでした。この美少年を美少女に変えて再構築。当時の担当マネジャーが「今付き合っている彼女が結婚するとかしないとか、うるさいんですよ」と愚痴っていたセリフも脳裏に浮かび、これを2番の歌詞に。徐々に形になっていきました。

 最初はフォーク調の曲がついていたけれど、ワーナーのディレクター・島田雄三さんがメロディーを変えることを提案。同じ事務所に所属していた作曲家の芹澤廣明さんのストックの中から3曲が候補に挙がりました。絞ったロック調の一曲に再度歌詞をはめ直していく中で、♪いーじゃない いーじゃない――としていたサビを、♪じれったい じれったい――に変更。編曲者の萩田光雄さんの手によってドライブ感ある曲が完成しました。芹澤さんとは「LPに入ればいいね」と話していたこの曲が、まさかシングルのA面に突然選ばれるとは思いもしませんでした。

 ◇売野 雅勇(うりの・まさお)1951年(昭26)2月22日生まれ、栃木県足利市出身の74歳。企業のコピーライターなどを経て、81年作詞家に。中森明菜「少女A」、チェッカーズ「涙のリクエスト」、郷ひろみ「2億4千万の瞳」などのヒット曲を生み出した。これまでに1500曲以上の歌詞を制作。2026年に活動45年の節目を迎える。

続きを表示

この記事のフォト

「美脚」特集記事

「中居正広」特集記事

芸能の2025年8月15日のニュース