人間国宝の競演に酔いしれた!

[ 2025年7月30日 19:45 ]

神田松鯉(左)と五街道雲助
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】映画「国宝」の大ヒットが社会現象化しているが、この夜は人間国宝の至芸にすっかり心を奪われてしまった。7月29日の第719回紀伊國屋寄席。5月、6月とホールの改修工事のためにお休みをしていたが、3カ月ぶりの公演は講談の神田松鯉(82)と落語の五街道雲助(77)という人間国宝2人が豪華共演し、客を喜ばせた。

 前座の柳家小じか(26)が間抜けな泥棒が主人公の「出来心」で開口一番を務めた後、二つ目の桃月庵こはく(37)が「ろくろ首」で客の心身をほぐし、真打の春風亭三朝(46)にバトンタッチ。一朝門下の本格派は「宮戸川」を艶っぽく軽めに仕上げ、そして一人目の国宝につないだ。

 2019年に重要無形文化財保持者に認定された松鯉先生。ホールからそれほど離れていない新宿末広亭では弟子の六代目神田伯山(42)がトリを取っており、師弟が新宿の夜を熱くした形だ。

 演し物は「河内山宗俊 松江侯玄関先の場」で、2代目松林伯圓が創作した天保六花撰の中から数寄屋坊主・宗俊を主人公にした一編。雲州松江18万6000石の松平出羽守の屋敷に腰元奉公に上がったものの、側女(そばめ)になれという要求を拒んだために座敷牢に閉じ込められた江戸の大店・上州屋の娘おなみ。主人から救出を依頼された宗俊が一計を案じ、無事に救い出す筋書きだ。

 江戸のダークヒーロー宗俊については1938年9月に28歳の若さで夭折した山中貞雄監督も「河内山宗俊」(36年)のタイトルで映画化している。当時15歳の原節子の可憐さが際立つ1本で、映像が残っているのがうれしい。
 話を戻そう。松鯉先生はメリハリの効いた名調子で、観客をぐいぐい話の世界に引きずり込んでいく。正体がバレた宗俊の開き直りのタンカはたまらなく痛快でスカッとした。

 中入りを挟んで、登壇した林家たけ平(47)は「死ぬなら今」で笑わせた。マクラからおかしくて楽しい高座だった。映画の「国宝」に触れ、「国宝は1本立てだけど、こちらは2本立て。その間に挟まって…」と、やりづらさを訴えながら、国宝両人の偉大さをアピール。あっぱれな膝代わりだ。

 たけ平が作った心地良い空気の中で、トリの五街道雲助が登場した。五代目柳家小さん(1995年)、三代目桂米朝(96年)、十代目柳家小三治(2014年)に次ぎ、23年に落語家としては4人目の人間国宝になった雲助師。暑い夏にぴったしの「船徳」で締めくくった。

 道楽の末に勘当されて大川端(隅田川)の船宿に居候している若旦那の徳兵衛が、船頭に挑み、悪戦苦闘する滑稽噺。初代古今亭志ん生(1856年没)が創作した「お初徳兵衛浮名桟橋(うきなのさんばし)」の発端部分を初代三遊亭圓遊(1907年没)が面白おかしく膨らませ、八代目桂文楽(1971年没)が練り上げた演目だ。

 文楽の「四万六千日、お暑い盛りでございます」のフレーズが有名。ちなみに四万六千日は7月9、10日を指し、今の時期に多くかけられる。雲助はやることなすことうまくいかない徳兵衛のドジぶりと、次第に疑心暗鬼になっていくお客とのやりとりを言葉だけでなく大胆なしぐさで表現し、爆笑を誘った。さすがの一席に観客も惜しみない拍手を送った。

 2人の人間国宝の競演。お客さんにとって3500円の“拝観料”は安くて、ありがたかったに違いない。

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