「御上先生」現代に響く名言の数々、誕生の背景は 脚本・詩森ろば氏の思い「現代社会に必要な…」

[ 2025年3月3日 09:30 ]

日曜劇場「御上先生」御上孝を演じる松坂桃李(C)TBS
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 「この作品は『バタフライ・エフェクト』がテーマです」。大反響を呼んでいるTBS系日曜劇場「御上先生」を手掛ける飯田プロデューサーは、そう宣伝している。バタフライ・エフェクトとは「非常に小さな出来事が、最終的に予想もしていなかったような大きな出来事につながる」こと。私たちの小さな行動が、社会全体に影響していく…という教示は、放送毎に「現代人に突き刺さる」と大きな話題を集めている。作中でつむがれる言葉の数々は、脚本家・詩森ろば氏によるものだ。詩森氏に、作品に込めた思いを聞いた。(中村 綾佳)

 「パーソナル・イズ・ポリティカル」「バタフライ・エフェクト」…。聞いたことはあるけれど、意識したことはない。そんな言葉たちが、本作に散りばめられ重要な意味を持っている。そしてそれらの言葉は、この物語を通じて確実に世間に浸透してきている。

 この言葉の数々は、脚本家・詩森氏が紡ぎ出している。詩森氏といえば、19年公開映画「新聞記者」で大きな話題を集め、これまで水俣病を扱った舞台「hg」や日航ジャンボ機墜落事故を題材にした舞台「葬送の教室」など社会問題を取り扱った作品に定評がある。そんな詩森氏が、鮮烈な言葉と斬新な物語を通じて、現代を取り巻くさまざまな問題について考えるきっかけをお茶の間に投じている。

 初回に鮮烈な印象を残したのが、「パーソナル・イズ・ポリティカル」という言葉。「個人的なことは政治的なこと」という意味で、詩森氏は「30年以上前に、LGBTQの作品を書いた時に取材した方から聞いた言葉」だと明かす。

 「初めてこの言葉を聞いたときは、“そういう考え方をしたことはなかったな”と思い、自分の未明を恥じました。それまでは、どこかで政治と個人は分かれた存在と思っていましたが、生きづらさを解決するには、システムや構造を変えなければならない。よくよく考えれば、当たり前のことだと思い、衝撃を受けましたね」

 この言葉を知ってから20年以上、詩森氏にとって「デイリーな言葉」であり「作品づくりの礎」であった。「これまでも私の中では、物語をつくる“大前提”として常にある考え方、礎となっている言葉です。この作品で初めて使った、というわけではありませんし、言葉にしないときもいつもそのことを心に置いています」といい、「今回も何気なく取り入れてみたら、プロデューサーや監督たちが凄く気に入ってくれて、この作品の中心になっていった…という感じです。まさか、こんなにフィーチャリングされる言葉になるとは思っていませんでした」と、思わぬ反響に驚いている様子だった。

 そしてこの言葉は視聴者の間にも浸透しているようで、詩森氏は「今の時代にこの言葉を知ってもらえるのは、とてもいいことだと思います。ぜひ皆さんに知って欲しい言葉だった」と喜んでいる。「撮影現場でも、生徒のみなさんやキャストの方々がこの思いをつなげてくださっているのを見て、そして見てくださっている方に届いているのを見ると、今の社会に必要な視点、そして必要な言葉だったんだなという印象です」と笑みを浮かべた。

 「バタフライ・エフェクト」も、詩森氏にとっては「なじみのある言葉」だったという。もともとは気象学の言葉で、ブラジルの蝶の羽ばたきによって起こった小さな気圧の変化がテキサスで竜巻を起こす。転じて、些細なモノゴトが連鎖して思いもよらぬできごとを起こすという意味でつかわれるようになった。

 それは、長年社会問題と真剣に向き合ってきた詩森氏の思いが、物語を通して現代社会に浸透しようとしている様にもつながっているかのようだ。セリフの中には、「真のエリートが寄り添うべき他者とはつまり弱者のこと」など社会に訴えかけるものが多数あり、視聴者の間では「御上先生名言集」などと特集しているファンもいるほどだ。世間への問題提起を込めたセリフは、受け取る者の解釈によって誤解を生んでしまう可能性もあるが、詩森氏も制作陣もキャストも、それぞれが勇気をもって発信している。

 「日曜劇場は規模感が大きく、私に務まるのかとプレッシャーでしたが…任せていただけたことは光栄なことだと思っています。また民放ドラマなので、勝手に“いろんな制約があるだろう”と思っていましたが、ほとんど制限されないまま書かせていただきました。もしかしたら、“民放の壁”みたいなものも、私たちが勝手につくり上げたものなのかもしれません。ただセンシティブな部分に踏み込んだところは、考査の方とも連携して、正確性を大切に、何度も何度も書き直しました」

 これまで演劇界で投げかけてきた問題提起を、日曜劇場という舞台でより身近にした詩森氏の新たな挑戦。今後、どのように物語が展開していくのか。「生徒役はもちろん、大人のキャストも含めて全員が変化しないと乗り越えられないドラマになっています。わたし自身もこのドラマに関わることで、あるべき教育がなんなのか…という考え方が刷新されたことも反映されていると思う」と明かし「人間はいつでも変化していけるし、価値観を変えていくことができる。その変化の素晴らしさが伝わるドラマになっていくんじゃないかな」と詩森氏。ドラマを通じて社会について考えつつ、今後濃密に描かれていく登場人物それぞれのヒューマンドラマにも注目したい。

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