「虎に翼」再び涙 入倉キャラ変?岡部ひろき新潟編彩る好演「ウソつかない役者に」父・岡部たかしも後押し

[ 2024年8月12日 08:15 ]

「虎に翼」入倉始役・岡部ひろきインタビュー

連続テレビ小説「虎に翼」第91話。入倉始(岡部ひろき)は佐田寅子と腹を割って語り合い…(C)NHK
Photo By 提供写真

 女優の伊藤沙莉(30)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「虎に翼」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は12日、第96回が放送され、「新潟編」が完結した。主人公・佐田寅子の新天地を彩った1人が、新潟地方裁判所の若き裁判官・入倉始。好演した俳優の岡部ひろき(24)に撮影の舞台裏や今後の展望を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 向田邦子賞に輝いたNHKよるドラ「恋せぬふたり」などの吉田恵里香氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算110作目。日本初の女性弁護士・判事・裁判所所長となった三淵嘉子氏をモデルに、法曹の世界に飛び込む日本初の女性・佐田寅子(ともこ)の人生を描く。吉田氏は初の朝ドラ脚本。伊藤は2017年度前期「ひよっこ」以来2回目の朝ドラ出演、初主演となる。

 岡部は今作で寅子の父・猪爪直言役を好演した名脇役・岡部たかしの息子。朝ドラ“親子リレー”も話題を集めた。朝ドラ出演は、笠崎みえ(宮澤エマ)の料亭「巳佐登(みさと)」で働く平左役を演じた昨年度前期「らんまん」に続き、2年連続2作目となった。

 当初は赴任してきた寅子に冷淡な態度を取っていた入倉だが、放火事件の合議体を機に「クソババア」「クソ小僧」と号泣しながら心の距離を縮めた。そして第96回、寅子と星航一(岡田将生)の東京異動が決まると、喫茶ライトハウスに駆けつけ「俺、お二人のような立派な裁判官になれるよう、頑張ります」と一礼。航一は「入倉くんは、もう立派な裁判官ですよ」。入倉は再び涙した。

 和歌山県出身。地元の工業高校土木科に進み「就職率もいいし、と思っていたんですけど(笑)、肝心の土木の授業を僕は面白がれなくて」。卒業後の進路に悩んでいた3年生の時、父も常連として参加している演劇ユニット「城山羊の会」(CMディレクター・山内ケンジ氏プロデュース)の「自己紹介読本」大阪公演(18年4月、父も出演)に衝撃を受けた。

 タイトル通り、ふとした“自己紹介”から知り合う男女7人が繰り広げる会話劇。「登場人物たちが今、本当にそこにいて、それをのぞき見しているような感覚で“世の中には、こんなに面白いものがあるんだ”と。後日、台本を郵送してもらって、それぞれの役を1人で練習するぐらいでした。その時ですね、“絶対、役者になりたい”と思い始めたのは」。小学生高学年の頃から劇場やDVDで演劇を鑑賞。内容は分からずとも「ドキドキしたことは覚えていますが、ずっと野球少年で。その頃からすれば、役者になるだなんて夢にも思いませんでした」。初めて演技の道を志し、19年春に上京した。

 “遅咲きブレイク”を果たした父は、息子の決断に「めちゃくちゃ大変だけど、自分が面白いと感じることをやった方がいい、と。反対は全くされませんでした」と役者業を後押し。「伊藤さんをはじめ、共演者の皆さんのお芝居が凄いから、いい経験になると言ってくれました」と「虎に翼」出演も喜んだ。

 岡部は上京後すぐ、ワークショップに参加。「当時は、まだ何者でもないのに、なぜか“自分はお芝居ができる”という根拠のない自信がありました。でも、そのワークショップでいいパフォーマンスが何もできず、めちゃくちゃスベったんです。帰りの電車で号泣してしまうぐらいでした」。自信は打ち砕かれた。

 「僕もそこから心を入れ替えて、ガラッと変わることができたんですけど、入倉にとっても寅子さんとのやり取りは、人生の転換点になったはず。人は変われる。その経験と実感がリンクしました。状況は違えど、僕や入倉のように、自分の弱さや間違いを認めないと、次のステップに進めない時がありますよね」。まるで“アテ書き”されたような役の変化に驚いた。

 19年10月、劇団「東京ミルクホール」本公演「レッツゴーギャング」で役者デビュー。21年の大河ドラマ「青天を衝け」で主人公・渋沢栄一(吉沢亮)の孫・渋沢信雄役、今年1月に公開された映画「カラオケ行こ!」(監督山下敦弘)で主人公・岡聡実(齋藤潤)が部長の合唱部コーチ・松原役を演じるなど、着実にステップアップしている。

 今回は座長・伊藤、上司・星航一役の岡田将生との共演シーンが多く、2人の集中力や作品との向き合い方を目の当たりにした。

 印象に残るのは第89回(8月1日)、喫茶ライトハウスで入倉と寅子が語り合うシーン。リハーサルで岡部が伊藤の台詞を1つ飛ばして先に言ってしまうことがあった。

 「でも、伊藤さんが“先に言いたくなるよね”と僕に寄り添って、橋本(万葉)監督や岡田さんも交えて色々と話し合ってくださって。ありがたかったです。“これは面白いシーンにするんだ”という皆さんの真摯な姿勢は本当に尊敬しますし、これから自分もそうしていかなきゃと思いました。自分は“ミスした”という意識だったんですけど、この素敵な現場にはそれを咎めるような雰囲気は全くなかったので、凄くやりやすくて感謝しています」

 デビューから約5年。「今は、うまくいかないことも含めて楽しめています」と充実感。理想の俳優像を尋ねると「お芝居ってウソなんですけど、その登場人物が実在するんじゃないかと、見る人が思えるような演技がしたいですね。僕が衝撃を受けた時の、のぞき見しているような感覚を味わってもらえるぐらいの。ウソなんだけど、ウソをつかない、みたいな。そんな役者になりたい、なれるように、もっと精進していきます」。朝ドラから羽ばたく期待の星が、また1人増えた。

続きを表示

この記事のフォト

「美脚」特集記事

「STARTO ENTERTAINMENT」特集記事

芸能の2024年8月12日のニュース