×

尚弥 計量初超過も4団体統一へ不動心「小ネタを挟んだってことで」 バトラー陣営陽動作戦に動じず

[ 2022年12月13日 04:00 ]

世界バンタム級4団体王座統一戦   WBAスーパー&WBC&IBF王者・井上尚弥 12回戦 WBO王者ポール・バトラー ( 2022年12月13日    有明アリーナ )

計量オーバーした井上(撮影・島崎 忠彦)
Photo By スポニチ

 前日計量が横浜市内のホテルで行われ、井上尚弥は1回目にリミットの53・52キロ(118ポンド)を30グラムオーバーし、2回目に53・45キロでパスした。国内世界戦の計量で初採用されたデジタル体重計が生んだキャリア初の体重超過だったが、“小ネタ提供”と笑い飛ばす余裕を披露。史上9人目、日本人とバンタム級では史上初となる4団体統一王者へ、直感で速攻勝負を仕掛ける可能性も示唆した。

 「オーバー」。体重計の数値を見たバトラーのマネジャー兼トレーナー、ギャラガー氏の一言に会場がざわついた。リミットをわずかに30グラム超える「53・55」。一発パスを逃した井上は苦笑いだ。

 ギャラガー氏は全裸計量用のタオルを取り出したが、井上はパンツを脱がずにジャージーを着てトイレへ。約5分後、再び体重計に乗り「53・45」にマッスルポーズを決めた。

 日本ボクシングコミッション(JBC)によると、デジタル体重計はバトラー陣営の要望。JBCが使う天秤(てんびん)式の体重計を「時代遅れ」と指摘し、両陣営合意の上で計量1時間前に採用が決まった。ジムなどでの事前計測では、リミットだった井上は約40分前に本番用の体重計で30グラムオーバー。つばを吐いて調整を試みたが「変わっていなかった」という。

 従来なら10グラム単位を切り捨てた「53・5」でOKだった。デジタル体重計は10グラム単位の数字が「0」と「5」しか出ず、両方が点滅する状態でオーバーと判断された。それでも井上は「初。いいんじゃないですか。(記事になる)小ネタを挟んだってことで」と余裕の表情。バトラーとはグータッチで別れ「実力ある選手の風格が出ていた」と評した。

 バトラー陣営はグローブチェックでも仕掛けてきた。井上と同じメキシコ製グローブをもう1セット用意するように要望。最終的には自ら持ち込んだパキスタン製の使用を決めたが、井上のパンチ力の秘密を探る“陽動作戦”とも取れる。戦略を問われた井上は「1ラウンドから火を噴く作戦も、様子を見る作戦もある。向かい合ってから直感力で攻めようかと。バトラーには決められたボクシングがあるけど、自分にはない」。小細工で揺さぶりに来た相手を圧倒する速攻に含みを持たせた。

 《急きょ変更》JBCは細工ができないように重りを使用した天秤式の体重計にこだわってきたが、海外では今やデジタル式による計量が一般的だ。JBCも地方都市などでの興行ではデジタル式を使用している。安河内剛特命担当事務局長によると、天秤式は年1回の検査が必要だが、扱える職人自体が減っているという。この日は準備した天秤式の挙動に不備が出たこともあり、急きょデジタル式への変更が決まった。

 《軽量級&アジア初へ》88年創立のWBO(世界ボクシング機構)が世界主要4団体に認知されて以降、4団体統一王者は8人。04年9月のミドル級のホプキンス(米国)が第1号で、直近2年で4人が誕生した。8人のうちライト級のヘイニー(同)が最も軽い階級で、バンタム級で誕生すれば軽量級初。井上ならアジア人初にもなる。現役の4団体統一王者はスーパーミドル級のアルバレス(メキシコ)、スーパーウエルター級のチャーロ(米国)、ヘイニーの3人。

続きを表示

この記事のフォト

2022年12月13日のニュース