尚弥が歴史つくった！日本人初＆バンタム級初の4団体統一！絶叫「やりました！」バトラー圧倒11回KO

プロボクシング・世界バンタム級4団体王座統一戦 （ 2022年12月13日    有明アリーナ ）

＜世界バンタム級4団体王座統一戦＞11回、ポール・バトラーにTKO勝ちし飛び上がって喜ぶ井上尚弥（撮影・島崎忠彦）
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　WBAスーパー＆WBC＆IBF統一世界バンタム級王者・井上尚弥（29＝大橋）がWBO同級王者ポール・バトラー（34＝英国）を11ラウンド1分9秒KOで破り、日本人初の4団体統一王者となった。WBA王座8度目、IBF王座6度目、WBC王座初防衛に成功するとともにWBO王座を獲得し、史上9人目、バンタム級では初の4団体王座統一に成功した。

　井上が第1ラウンドからリズムよくガードをこじ開ける鋭いジャブ、ワンツー、右フック、左ボディーを繰り出し主導権を完全に握った。第2ラウンド以降も井上がバトラーとの距離を詰め圧力を増していった。第4ラウンド終盤にはボディーを集中的に狙い、防戦一方のバトラーを攻め立てた。

　第5ラウンド以降にはガードを下げてバトラーを挑発するポーズを取る井上だったが、バトラーはガードを固めたまま守り中心の戦術を変えず。第7ラウンドには、ついに両手を大きく広げ“打ってこい”と誘うしぐさも見せた。第8ラウンドではついに両腕を後ろに組んで顔を突き出す挑発。さまざまな対応を見せる井上の一方的な展開が第10ラウンドまで続いた。

　そして第11ラウンド、コーナーに追い詰めた井上が猛ラッシュを見せると、ここまで耐えてきたバトラーがロープにしなだれかかりながら崩れ落ちた。そのままレフェリーが試合を止め井上が4団体の王座を統一した。きれいな顔をした井上はリングで4本のベルトを体に身に着け「皆さん、やりました！4団体統一王者になりました！ここまで苦難もありましたが、やっと団体の垣根を越え、12月13日、最高の日になりました！」と大観衆に向かって絶叫した。

　井上がボクシング界に新たな歴史をつくった。04年にミドル級のバーナード・ホプキンス（米国）が初めて達成して以来、4団体王座統一は史上9人目。1試合ずつベルトを獲得しての4団体統一はホプキンス、スーパーミドル級のサウル・“カネロ”・アルバレス（メキシコ）に次いで3人目だが、王座決定戦を含まずに全て前王者から王座を奪ったケースは世界初だった。
　
　「バンタム級での最終章」と公言した4団体王座統一戦。一方で「ここはゴールではなく通過点」と話したように、練習は4つめのベルトを獲得するためのものではなかった。9月、かねて希望していた初の米ロサンゼルス合宿を行い、WBAスーパーバンタム級1位のホバニシアン（アルメニア）、フェザー級世界ランカーのロペス（米国）らとスパーリングを消化。帰国した井上を見て大橋ジムの大橋秀行会長は驚いた。「ビックリするぐらい強くなった。6月（のドネア戦）であんなに強かったのに、こんなに変わるのか」。1、2階級上の強豪がゴロゴロいる環境。無双中のバンタム級では出す必要がなかった潜在能力を、思う存分ぶつけることができた。

　スーパーバンタム級を見据え、元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナー考案のフィジカルトレを昨年11月から継続。足を使うバトラー対策として、スーパーフライ級時代に腰を痛めて以来控えていた10ラウンドのスパーリングも解禁した。最終調整ではなるべく避けてきた弟・拓真との“禁断”のスパーリングも実施。「当てさせてくれないし、気持ちを乗せていきたい」と強化の手段を惜しまなかった。前日計量で1回目に30グラムオーバーするハプニングも「小ネタ」と笑い飛ばし、リングに上がった。

　減量が厳しく、対戦相手にも恵まれなかったスーパーフライ級と違い、バンタム級では「充実の日々を過ごせた」と振り返った。トーナメント形式のワールド・ボクシング・スーパーシリーズ（WBSS）が開催された運にも恵まれ、新旧王者ら強豪との対戦が増えてボクシングの幅も広がった。3階級制覇、WBSS優勝、日本人初のパウンド・フォー・パウンド（PFP、全階級を通じた最強ランキング）1位と快挙を続けた階級を去り、次はスーパーバンタム級での4階級制覇を見据える。「バンタム級でも（体が）小さな方なので、ここから先は挑戦と思っている」。日本ボクシング界に歴史を刻んだモンスターの前に、次に開くべき新たな歴史の扉が出現する。