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拳四朗 7回TKO統一王者!京口との日本人対決制す 5回壮絶な打ち合いでダウン奪う

[ 2022年11月2日 04:45 ]

WBC&WBA世界ライトフライ級王座統一戦   ○WBC王者 寺地拳四朗《7回2分36秒TKO》 WBAスーパー王者 京口紘人● ( 2022年11月1日    さいたまスーパーアリーナ )

<WBA・WBC世界ライト・フライ級王座統一戦 寺地拳四朗・京口紘人>5回、京口(右)からダウンを奪う寺地(撮影・島崎 忠彦)
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 WBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗(30=BMB)が12年の井岡一翔―八重樫東戦以来10年ぶり2度目となった日本人同士の2団体王座統一戦を制した。WBA同級スーパー王者・京口紘人(28=ワタナベ)から2度ダウンを奪い、7回2分36秒TKO勝ち。3月に返り咲いたWBC王座の初防衛に成功するとともに、学生時代からしのぎを削ったライバルにプロ初黒星をつけて階級最強を証明し、WBO王者ジョナサン・ゴンサレス(31=プエルトリコ)との3団体統一戦へ意欲を示した。 

 5回。海外メディアによる「年間最高ラウンド」候補選出確実の名勝負が生まれた。拳四朗の右ストレートで京口がダウン。さらにストップ寸前まで攻めたが、京口が逆襲して拳四朗が棒立ちに。白熱の打ち合いに会場は騒然となった。

 「周囲の声に乗せられていきすぎた」。コーナーに戻って悔やんだ拳四朗に、加藤健太トレーナーは倒しに行った姿勢を否定せず、「力じゃ倒れないよ」「よく見てやろう」と落ち着かせた。6回、距離を取って立て直した拳四朗は7回に再び右で倒してトドメ。「拳四朗があんなにムキに倒しにいったのは初めて。日本人同士の統一戦の怖さかな」と名参謀は振り返った。

 「僕がゲームプレーヤーで加藤さんがコントローラーを握っている」。絶大な信頼を置く三迫ジムの加藤トレーナーの指示と作戦はこの日もさえた。打ち合うか、離れるか。どちらでも戦える拳四朗に予想は割れたが、トレーナーが徹底したのは「跳びはねるバックステップをしない。前に出る京口が戦いやすくなる」。地に足をつけ、高速ながら威力あるジャブを突き刺して圧倒した。父の寺地永BMBジム会長は「体でボクシングを覚えていた拳四朗が頭を使うようになった」と加藤氏に感謝した。

 2つの挫折を乗り越えて覚醒した。20年に起こした“泥酔騒動”とベルトを失った昨年9月のTKO負け。具志堅用高(元WBA世界ライトフライ級王者)の13連続防衛記録を更新する夢が消え、心が完全に折れた拳四朗を「俺は続けたい。まだいける」と励ましたのも加藤トレーナーだった。「挫折や負けることも人生には必要と分かった」。才能を持て余していた男は敗戦を受け入れ、ボクシングに本気になった。

 リングでは「加藤さんに強くさせてもらって戦えた」と感謝し、WBAのベルトを肩にかけさせた統一王者。「これからも加藤トレーナーと一緒に強くなる。期待して見ててください」。3団体、そして4団体統一の野望へ、名参謀を従えた拳四朗がさらに覚醒を続ける。

 《データ》
 ○…日本人の統一世界王者は6人目(主要3団体時代以降)。バンタム級の井上尚弥が3団体王者で、5人が2団体王者。スーパーフライ級の渡辺二郎はWBAの承認を受けずにWBC王者と統一戦を行い、試合直後に王座を剥奪されている。WBCがWBAから分裂した直後の2団体時代にはフライ級の海老原博幸、スーパーフェザー級の沼田義明と小林弘、スーパーライト級の藤猛、スーパーウエルター級の輪島功一が統一王者だった。
 ○…ライトフライ級の2団体統一王者は7人目。過去はマイケル・カルバハル(米国)、ウンベルト・ゴンザレス(メキシコ)、サマン・ソーチャトロン(タイ)=以上WBC&IBF、ジョバンニ・セグラ(メキシコ)=WBA&WBO、田口良一(ワタナベ)、ヘッキー・ブドラー(南アフリカ)=以上WBA&IBF。WBAとWBCの同級統一王者は初めて。

 ◇寺地 拳四朗(てらじ・けんしろう)1992年(平4)1月6日生まれ、京都府城陽市出身の30歳。奈良朱雀高―関大。アマ74戦58勝(20KO)16敗。14年8月プロデビュー。元日本ライトフライ級王者、元東洋太平洋同級王者。17年5月、WBC世界同級王座を獲得して8度防衛。21年9月、矢吹正道(緑)に10回TKO負けで陥落も22年3月の再戦に3回KO勝ちして王座復帰。1メートル65の右ボクサーファイター。父・永(ひさし)BMBジム会長は元東洋太平洋ライトヘビー級王者。

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