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新王者だ!矢吹がHighになった 拳四朗相手に燃えたよ…打つべし!打つべし!10回TKO勝ち

[ 2021年9月23日 05:30 ]

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦   ○同級1位・矢吹正道 TKO10回2分59秒 王者・寺地拳四朗● ( 2021年9月22日    京都市体育館 )

寺地(左)をTKOで破り新王者に輝き、ガッツポーズする矢吹正道(撮影・坂田 高浩)
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 挑戦者の矢吹正道(29=緑)が10回2分59秒TKOで王者の寺地拳四朗(29=BMB)を破り、世界初挑戦で王座を獲得した。序盤から大きな振りが印象的なパンチで主導権を握り、終盤の激しい打ち合いを制した。これまで防衛8度の王者を撃破し、リングネームの由来である漫画「あしたのジョー」の主人公で東洋太平洋王者が最高だった“本家”矢吹丈を超えた。

 漫画やアニメで描くのは、はばかられる鮮やかな下克上だ。両まぶたを腫らした矢吹は観衆2000人と思えない大きな拍手を浴び感情を爆発させた。

 「この試合で本当に死んだろうと思っていた。トランクスに子供の名前を入れて遺言、形見みたいな感じで。本当に死んだろうと思ったけど、生きて勝つことができた。皆さんのおかげで世界チャンピオンになれました」

 序盤は鋭い王者の左ジャブに左ジャブ、右で対抗。4回終了時はジャッジ2人からフルマークをもらった静かな立ち上がり。だが、9回にパンチで王者の右まぶたをカット。返り血を浴び、本能が目を覚ました。矢吹丈のようにガードを下げた。殴り合い。ボクシングと言うより、ケンカだ。“生きるか死ぬか”だった10回の右ストレートから畳み掛けるとレフェリーが止めた。地上波での放送がなかったのが、惜しまれる激闘だった。

 悪ガキだった。中学3年の時「女にモテる」という動機で始めた。練習が終わると、夜通し遊んだ。17歳で長女・夢月(ゆづき)さんが生まれ、責任感が芽生える。16年のプロデビュー時は妻・恭子さん、長女、長男・克羽(かつば)君を養い、建物の防水工事と、ボクシングを両立させた。父の背中を見てボクシングを始めた11歳と8歳の子供2人はこの日、リングサイドで目を輝かせていた。

 「一番強いと言われている拳四朗選手とやったので、もうやる必要がないかな。軽量級はファイトマネーが安いので命を懸けられない。この試合は(命を)懸けていたけど次はないかな」。燃え尽きた矢吹。現役引退の可能性にも触れ、先のことは“真っ白”だ。

 リング上から子供たちへと伝えた。「見ての通り、俺が世界一の男やき」。最高のドヤ顔だった。ボクシングに懸けた青春の集大成が、そこにあった。

 ≪本名は佐藤、弟は力石≫◆矢吹 正道(やぶき・まさみち)本名・佐藤正道(さとう・まさみち)1992年(平4)7月9日生まれ、三重県鈴鹿市出身の29歳。中3から本格的に競技を始め、四郷高(三重)で東海大会フライ級優勝2回などアマ戦績は16勝9KO5敗。16年3月にプロデビューし同年の西日本フライ級新人王。20年7月に日本ライトフライ級王座獲得。同年12月に初防衛し、のちに返上。1メートル66の右ボクサーファイター。同じくボクサーの弟も「あしたのジョー」にあやかって力石政法(27)。家族は妻と1男1女。

 ▽あしたのジョー 1968~73年に「週刊少年マガジン」で連載された漫画。矢吹丈が丹下段平との出会いでボクシングを始め、宿命のライバル・力石徹との対戦で成長し、最強王者ホセ・メンドーサとの死闘で白く燃え尽きるまでを描いた。「打つべし!」「立つんだジョー!」など名ゼリフを生み、力石が死んだ際には実際に葬儀が行われるなど社会現象になった。原作・高森朝雄(梶原一騎)、作画・ちばてつや。

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