吉野正人 首のけがで引退決断、痛みとしびれに苦しんだ21年の年明け「寝る姿勢もとれず…」
スピードスター最後の花道(上)
8月1日、DRAGONGATE神戸ワールド記念ホール大会で現役を引退する吉野正人(40)がスポニチアネックスのインタビューに応じた。引退が間近に迫った現在の心境を語り、そして今までのレスラーキャリアを振り返った。2回にわたり連載する。
――引退まで残りわずかとなりましたが、現在はどんな心境ですか?
「周りから引退のことを言われることの方が多くて、正直『俺はプロレスを辞めるのか?』って思ってしまうほど自分自身はまだ実感があまり湧いてないですね」
――引退はいつ頃から考えていたんですか?
「2017年に首をけがしてから考えていました。その時点で3年と決めていて、2020年がデビュー20周年で40歳になる年だったので、ちょうど切りがいいかなと思って2020年のどこかのタイミングで引退しようと考えていました。だから2019年の年末に引退発表をしました。残りの1年は20年間応援してくれたファンの皆さんに恩返しをしていく1年にしようと当時は思っていました」
――2019年の12月に引退発表をしましたが、ファンの人々や周りの人々の反響などを聞いてどんなことを感じましたか?
「ファンの人たちも自分がけがして欠場している姿を見てきているので、『見たい』という気持ちは強いけど無理はしてほしくないという複雑な声が多かったですね」
――当初は「2020年で引退」と発表していましたが、2021年8月1日に引退延期となりました。延期を決断した理由を教えてもらえますか?
「コロナ禍だったのが大きな理由ですね。ファンの人たちも楽しみにしてくれていたと思うんですけど、数カ月興行が止まってしまいファンの皆さんに試合を見せる時間が無くなってしまいました。それぞれの楽しい時間が奪われてしまった状況の中だったので、会社内外ともにもう少し続けてもらえたらという話がありました。自分の中では凄く迷いましたね。2017年から決めていましたし、自分のことだけ考えたら2020年で辞めていたと思います」
――コロナ禍の中でモチベーション維持などはどうだったんですか?
「気持ちの切り替えの部分が大きかったです。だけど、その間も1カ月の半分ぐらい試合に出場していたので、気持ちの切り替えのことを言っている間もなく巡業や試合で1日1日が早く流れていきました。なので、今組まれている試合を精いっぱいやり遂げようという気持ちしかなかったですね」
――引退延期になって現在のコンディションはどうですか?
「2020年の年末もちょっと無理をしたので、2021年の年明けになってから急激に古傷の首の状況が悪化して欠場していました。しびれと痛みでお箸も持てなくなりましたし、仰向けやうつ伏せにもなれなかったですし、横にもなれなかったので寝る姿勢もとれなかったですね…」
――そんなに悪化していたんですね。
「はい。座りながら寝ようとしてもしびれや痛みで寝られなく1日1時間から1時間半ぐらいしか睡眠が取れない状況が続いていました。そんな中で高知県にバイタルリアクトセラピーという治療があって、月の半分ぐらいは高知に居て、そこに通って、ここまで何とか復活できたって感じですね」(続く)
《今年の神戸ワールド記念ホール大会は2日連続開催》DRAGONGATEは毎年の恒例として、年間最大のビックマッチ「KOBEプロレスフェスティバル」を神戸ワールド記念ホールで開催している。今年の神戸ワールド記念ホール大会は7月31日、8月1日の2日連続で開催する。初日の7月31日は例年通り「KOBEプロレスフェスティバル2021」としてメインイベントではオープン・ザ・ドリームゲート選手権がマッチメークされた。王者シュン・スカイウォーカーにKzyが挑戦する。2日目の8月1日は「SPEED STAR FINAL」として現役を引退する吉野正人の引退試合が予定されている。
◆吉野 正人(よしの・まさと)1980年(昭55)7月17日生まれ、大阪府出身の40歳。闘龍門7期生として入門。2000年9月、メキシコでの伊藤透(現・大鷲透)戦でプロレスラーデビュー。団体内では中軽量級戦線の絶対王者として活躍。団体外でも03年にウルティモ・ドラゴンとのタッグで第1回ディファカップを優勝し、07年には土井成樹とのタッグでプロレスリング・ノアのGHCジュニアタッグ王者になった。10年には団体最高峰のオープン・ドリームゲートを初奪取し、計4度戴冠した。団体内のベルトは全て戴冠し、「スピードスター」のキャッチコピーで長い間、団体のトップをけん引した。19年12月に現役引退を発表し、21年8月1日の神戸ワールド記念ホール大会「SPEED STAR FINAL」でプロレスラーを引退する。
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