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八重樫3階級制覇!意地のライトフライ再挑戦「できたでしょ」

[ 2015年12月30日 05:30 ]

王座奪取し、男泣きの八重樫

プロボクシングIBF世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦 ○同級13位・八重樫東3―0判定 王者ハビエル・メンドサ●

(12月29日 東京・有明コロシアム)
 IBF世界ライトフライ級タイトルマッチでは挑戦者の八重樫東が王者メンドサに3―0判定勝ち。亀田興毅、井岡一翔に続く日本人3人目の3階級制覇を達成した。

 「ばあちゃんが見てるぞ!」。コーナーに戻った八重樫にセコンドから声が飛んだのは、7ラウンド終了後。メンドサの反撃を受け、「崩れかける兆候が出ていた」(松本好二トレーナー)ときだった。差し出された遺影には、11月9日に故郷・岩手で亡くなった祖母ヨリさんの姿があった。

 「僕が好きだった母方のばあちゃんなんです。きょうはこの人に勝たせてもらいました」。八重樫を常に温かく見守ってくれていたヨリさんの納骨は今月27日に予定されていたが、大雪で中止。「僕の試合を見てからお墓に入るんだなと勝手に解釈しました。これでお墓参りができます」。気迫でペースを取り戻し、王者をKO寸前まで追い込んで3階級制覇を達成。IBFの赤いベルトとともに遺影を手にすると、リング上で泣き崩れた。

 出入りのスピード、絶妙で多彩なカウンターと鋭いボディー。技巧の差を見せたが、苦しい戦いだった。初回に口の中を切り左のまぶたは腫れ上がった。「(革の薄いメキシコ製グローブ)レイジェスは痛い。最後まで怖かった」。それでも八重樫の体を動かしたのはライトフライ級で勝ちたい執念だった。

 1年前、ボディー一発に沈んで世界戦2連敗。フライ級から3カ月あまりで1階級下げての挑戦は無謀と言われた。一時は引退を考えたが「自分自身の証明」とプライドを懸けて同階級での再挑戦を決意した。「体の使い方を変えれば今の筋肉量でも出力を上げられる」とトレーナーを変更し、週1回、神社で100段の階段ダッシュなどの強化トレ。体の軸がブレなくなり、スピードもアップした。8月の前哨戦では、前日計量から10ポンド(約4・5キロ)しか増量が許されないIBFの当日計量ルールへのシミュレーションも行うなど用意周到だった。

 「計量からのリカバリーに凄く気を使った。そういう意味で実りある一年だった」。試合後も陣営が視野に入れている4階級制覇や統一戦に興味を示さなかった3階級王者。それでも「できたでしょ、ライトフライ級でも。できるんですよ」との言葉には力と誇りを込めた。

 ▼メンドサ―八重樫 八重樫が序盤は左を中心に組み立てアッパーも交えた。中盤以降は右ストレートを効果的に打ち込む。最終ラウンドは猛ラッシュでダウン寸前まで攻め立てた。打ち合いに無理に付き合わない冷静さも光っていた。メンドサは左ストレートが脅威だった。しかし、スタミナや精神力でも八重樫には及ばなかった。

 ◆八重樫 東(やえがし・あきら)1983年(昭58)2月25日、岩手県北上市生まれの32歳。黒沢尻工でボクシングを始める。拓大時代は国体優勝。05年3月プロデビュー。11年10月、2度目の世界挑戦で、WBA世界ミニマム級王座獲得。13年4月にWBC世界フライ級王座を獲得。14年9月の4度目の防衛戦でローマン・ゴンサレスに9回TKO負け。身長1メートル61、リーチ1メートル61。右ボクサーファイター。家族は夫人と1男2女。

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2015年12月30日のニュース