【浜田剛史の目】八重樫　左対策ズバリ！頭脳と根性出し切った

チャンピオンを追い詰める八重樫

プロボクシングＩＢＦ世界ライトフライ級タイトルマッチ１２回戦 ○同級１３位・八重樫東３―０判定　王者ハビエル・メンドサ●

（12月29日 東京・有明コロシアム）
　勝負を分けたのは８回だった。７回、劣勢のメンドサが勝負を懸けて前に出た。これで八重樫の足が止まったが８回、メンドサが勢いに乗ろうとしたところを打ち合いで止め、メンドサを消耗させた。私はこの勝負、鍵を握るのは前半にあると見ていた。メンドサは好戦的な選手だが、八重樫は打ち合いに付き合うのではなく、打ちながらどう自分のペースに持ち込む戦い方ができるかが大事なテーマだった。

　正直に正面から突っ込むメンドサに対し、八重樫はうまい左対策を見せた。右を打ち込む。ワンツーで追い込む。さらには右手をグルグル回して戸惑わせる。４回は相手がボディーで来たところをボディーで返す。勝負どころでの緩急が光り得意の出入りも効果的だった。

　八重樫は昨年９月のゴンサレス戦、同年１２月のゲバラ戦と世界戦２連敗を喫したことで持ち味の肉を切らせて骨を断つ根性ボクシングに陰りが出たように見えた。しかし、ともに研究し尽くしただろうこの試合にあって、八重樫の頭脳ボクシングがさえ渡った。根性と頭脳を全部出し切った見事な３階級制覇だった。（元ＷＢＣ世界スーパーライト級王者）