好選手が集う神奈川大野球部は「上手いだけでは獲らない」ドラフト候補も「フル単」継続“学生の本分”貫く

[ 2026年2月16日 22:41 ]

リーグで3連覇中の神奈川大を指揮する岸川雄二監督(撮影・柳内 遼平)
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 アマチュア野球の指導者らに采配やチーム運営などについて、インタビューする連載「指導者の思考法」。第14回は神奈川大学野球リーグで3連覇中の神奈川大を指揮する岸川雄二監督(52)。近年多くの好選手が集まり、リーグ戦で安定した成績を残せている要因について聞いた。(取材 アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

 ――3連覇を達成。監督として勝ち続ける「コツ」はあるか。
 「毎年やっていることは同じなんです。何が手応えかと聞かれると、本当に分かりません。ただ、1つ言えることは普段の練習、寮生活、学校生活のすべてを徹底してやろう、と選手たちに言い続け、昨年の4年生たちが本当によく実践してくれた。だからこそ苦しい時に粘れたし、少ないチャンスをものにできた。コールド勝ちもあれば、コールド負けを経験するような波のあるチームでしたが土壇場で4年生が意地を見せた。結局は個の力というより、それぞれの立場で最大のパフォーマンスを発揮しようというメンタル、すなわち“チーム力”が結果に結びつきました」

 ――試合ではスタンドを含めた一体感が凄かった。
 「野球というのは、150キロを投げる、遠くに打球を飛ばす、といった数字で測れる能力だけが全てではありません。たとえスタンド応援という立場であっても、チームのために自分ができる最大限の貢献をする。その価値は、数字には決して現れない。4年生に上野(隼希)という投手がいました。彼は怪我の影響で、公式戦のマウンドに立つことはほとんどありませんでしたがスタンドで誰よりも声を出し、チームを鼓舞し続けてくれた。私は選手たちの前で言ったんです。“選手も頑張った。でも、チームが勝てた一番の要因は、こうやって全力を尽くしてくれた上野のおかげだ”と。数字で測れない部分にこそ、チームの本当の強さが宿る。そういうチームでありたいという私の理想を、見事に体現してくれました」

 ―一体感はどのようにして生まれる。
 「選手たちに“一体感を持て”と言って持てるわけではありません。それではある種の約束事になってしまう。“これをしなければ怒られる”から生まれることは表面的な事象にしかなりません。本当の一体感は上級生、特に4年生がその背中で示すことによって生まれます。下級生は良くも悪くも先輩たちの姿を見て学ぶ。“先輩があれだけ頑張っているんだから自分たちもやり切ろう”と。それが去年のチームにはありました。試合に出られない選手の方が圧倒的に多い。だからこそ、ベンチに入れなかった選手たちが“このスタンドは自分たちがまとめるんだ”という覚悟を持つことが重要になる。その覚悟が、グラウンドで戦う選手たちの力になるんです。試合に出場している(DHを含めた)10人が“みんなを背負って戦う”と本気で思えば、スタンドの部員も“俺たちの代表が戦ってくれている”と本気で応援できる。上級生がその姿勢を示すからこそ、チームは一つの方向を向くことができる。それが我々の考える一体感です」

 ――近年、高校時代にプロ注目だった好選手が進学先に神奈川大を選んでいる。魅力は何か。
 「逆に私が聞きたいくらいです(笑い)。ただ、私が監督に就任してから、ずっとこだわってきたのは“野球の満足度”です。エースであろうが、4年間一度もベンチに入れなかった選手であろうが、保護者の方々から支払っていただく学費や部費はほぼ同額です。毎日、汗水流して稼いだお金を子供の成長のために投資してくださっている。選手が風邪で寝込んでも、やる気なく過ごしても、その1日にはお金が支払われています。ならば、その投資以上の価値を提供しなければならない。私は“絶対にプロに行かせる”とは言いません。ただ、預かった選手は絶対に大事に育てるという自信はあります。時には厳しいことも言います。親にはなれないけれど、親に近い存在にはなれる。勉強は教えられなくても、社会で生きていくためのスキルは教えられる。全員を平等に扱うことは不可能でも差別はしない。ベンチ入りに力が及ばなかった選手に“残念だったね”で終わらせない。今、君がチームのためにできることは何か。それを一緒に考え、彼らの4年間の価値を最大化する。この“4年間が価値ある時間になる”という考え方が、もしかしたら選手や保護者の方々に響いているのかもしれません。その価値観を共有していただいていることが、良い選手が集まってくれている一つの理由だと信じています」

 ――野球部は文武両道を重視している。
 「もちろんです。部員の単位は全て管理しています。半期ごとに必要な単位を下回るようなことがあればすぐに個別ミーティングを行います。これもお金の話で恐縮ですが、授業料を払っているのは親御さん。そのお金を無駄にするなというのが私の考え。勉強が得意か、不得意かは関係ない。大学生である以上、学業が本分です。今年のドラフト候補として注目選手の松平(快聖)であっても、これまで単位を1つも落としていません。試験期間中は練習を休んで勉強に集中することを推奨しています。それが神奈川大学の方針なんです」

 ――お話を伺っていると高校野球の監督に近い雰囲気を感じる。
 「大学野球は高校野球の延長と考えています。大学野球とは何か、という定義は曖昧です。だからこそ、多くの選手が“大学生は大人だから”と格好をつけ、ラフになってしまう。私はそれが嫌なんです。高校野球で培った、ひたむきさや爽やかさといった素晴らしい文化を、なぜ大学で捨ててしまうのか。年齢を重ねて、より自分の意見を持つことは大切です。しかし、その発言や行動に責任が伴わなければならない。責任を果たして初めて、主体性が生まれる。方針を示し、その上で学生たちが自ら考え、チームをより良いものにしていく。そのための土台づくりが指導者の仕事です。“上手い”だけで選手を誘ったことは一度もありません。その子の振る舞いや言動を必ず現地で見て、私たちの考えに共感してくれるかどうかを重視しています」

 ――神奈川大のスピリットが見えてきた。新シーズンへの意気込みは。
 「3連覇中ということで他校は我々を倒すために全力で向かってくる。それを上回るには去年と同じことをしていては絶対に勝てない。思考を変え、練習の精度を一つ一つ上げていく必要があります。我々は神奈川大学のシンボルチーム。勝つことはもちろん、勝つにふさわしいチームであり続けなければならない。今年の目標は日本一ではありますが、まずは4月の開幕戦に勝つこと。その目の前の一戦に、チーム全員で全力を尽くす。そこからすべてが始まります」

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