プロ野球審判員の重圧、公務員の安定、記者の熱狂…「ワークライフバランス」の本当の意味を考えてみた

[ 2025年10月7日 08:00 ]

NPB審判員時代の柳内記者
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 自民党の総裁選が4日、行われ、第29代総裁に高市前経済安保相が選出された。

 就任後、ステージであいさつした高市氏は「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」とフル回転を誓った。

 ワークライフバランスとは何だろうか――。ググってみると、「仕事と生活の調和」。仕事以外の生活とも向き合い、その両方を充実させる働き方・生き方と、定義されている。賛否両論を呼んだ「ワークライフバランス(以下WLB)という言葉を捨てます」発言について考えてみた。

 私は11年から16年までプロ野球の舞台でNPB審判員を務めた。球審では1試合で200球以上はジャッジ。1球もミスしない完璧な日なんて一度もなかった。夜、寝床に入れば「あれはストライクにすべきだったなぁ…」とミスジャッジの光景が鮮明に浮かぶ。休日、気分転換のショッピングの際にも「あれはセーフにすべきだった…」などと脳内は仕事のことばかり。ジャッジの精度を欠く日が続いた時なんて、翌日に控えた試合が怖くて、たまらなくなる。振り返ると審判員における「WLB」は仕事に全ての比重がかかっていた。

 16年にNPBを退職し、第2の人生をスタートさせた。ジャッジを下すプレッシャーの日々を送った経験から「WLB」を重視して地方公務員(行政職)に転職した。定年まで職が保証されている安定した仕事だ。午後5時すぎに仕事が終わる日もあった。ただ、予想外に「WLB」は充実しなかった。プライベートの時間は増えたが、胸を張れるような仕事をした感覚がなかった。公務員の仕事は再現性、公平性を重視されている。「自分にしかできない仕事がしたい」とアイデンティティーを持ちたければ、去るしかない。

 3つめの仕事はスポニチ記者。入社からアマチュア野球担当一筋だ。今度は「W」の強度が高い、本当に高い。東北・関東エリアを担当しており、毎日アマ球界には何かしらの動きがあるためパソコンを開かない日はない。ただ、選手の成長を追いかけ、応援することができる仕事にはこれまでにない魅力があり「W」の満足度は人生マックスだ。年中多忙だが、だからこそ休日がかけがいのない一日になり、酒もうまい。

 ブラック企業を擁護するつもりはない。従業員を搾取する企業に忠誠を尽くす必要もないし、転職すればいい。その上で、「WLB」とは単純に仕事と生活に充てる時間の割合ではなく、どちらの時間も充実して生きることができる「気持ち」を持つことで、調和が生まれるものだと確信している。

 「働いて、働いて、働いて、働いて、働く」ことで人生が最も輝くのであれば、それは「WLB」が成り立っているとも言える。(記者コラム・柳内 遼平)

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