【内田雅也の追球】「胸の打ち騒ぐ」満塁切り

[ 2025年9月19日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神7―2広島 ( 2025年9月18日    マツダ )

<広・神>6回2死満塁、代打・秋山は見逃し三振に倒れる(投手・及川)(撮影・大森 寛明)
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 野球を愛した俳人、正岡子規の歌「ベースボール九首」にある。

 今やかの三つのベースに人満ちてそヾろに胸の打ち騒ぐかな

 「そぞろ」は「何ということもなく、心がそちらに動いてゆくさま。気の落ち着かないさま」と辞書にある。満塁の興奮や緊張を歌っている。

 そんな満塁に救援登板したのが阪神3番手、及川雅貴だった。4―2と2点リードの6回裏、湯浅京己が2四球と安打で招いたピンチだった。前夜に続く連投である。

 打者は代打・秋山翔吾。外角スライダーを続けて1ボール―1ストライク。外角カッターで見逃しストライクを奪って追い込んだ。勝負球は外角低め速球。149キロに秋山は反応できなかった。

 見逃し三振で引き継いだ3人の走者は皆、立ち往生。無失点でしのいだ。及川はこれで今季、満塁時6打数無安打。「胸の打ち騒ぐ」緊張のなか完璧に抑えているのだ。

 登板はこの1人のワンポイントだったが勝敗に関わる重要な局面。間違いなく殊勲者だった。リード2点の満塁で、ホールド(H)が付いた。次の回ならリードは4点に広がり、1イニングを投げても付かなかった。

 連続試合Hは15試合に伸びた。セ・リーグ歴代2位タイでトップは藤川球児が2005年に記録した17試合である。

 リーグ優勝を果たした、その05年、藤川は実に80試合に登板し、46H、救援勝利を合わせ53ホールドポイント(HP)で最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲っている。

 05年、藤川は高卒プロ7年目だった。当時を振り返り、「03年の優勝は正直、ひとごとだった」「05年は“自分たちの時代が来たな”ってことを言っていた」と語っている。ベースボール・マガジン社『阪神タイガース80年史』にあった。

 及川は今季、高卒6年目で優勝の立役者となった。優勝した一昨年も3勝7Hで貢献はしたが、藤川同様、今こそ“自分たちの時代が来た”と感じているのではないか。

 49HPでトップの大勢(巨人)の50HPに迫る。タイトルも狙える。

 きょう19日は「糸瓜(へちま)忌」、子規の命日だ。1902(明治35)年、34歳で逝った。「ベースボールに如(し)く者はあらじ」と野球を一番に楽しんだ子規のように、及川もいま、投げる喜びを感じていることだろう。 =敬称略=
 (編集委員)

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