選抜準V智弁和歌山がトップのチーム打率.357 野村克也氏の教え「力がないならバットの重さを…」

[ 2025年4月1日 06:00 ]

木製バットで試合に臨んだ智弁和歌山の大谷

 第97回選抜高校野球大会は、横浜(神奈川)の優勝で幕を閉じた。飛距離の出にくい新基準バットの導入2年目を迎え、木製バットを使用する選手も増加。準優勝の智弁和歌山(和歌山)は、下位打線で巧打者の大谷魁亜(かいあ=3年)と黒川梨大郎(2年)が木製を使った。このバットはマスコットバットと同等の1200グラム以上あり、グリップも太い特別仕様。今大会で木製の新たな使い道が示されるまでの裏側に迫る。

 正社員が2人しかいないフォースキフト社(神奈川県厚木市)。そのうちの1人で、昨年7月から智弁和歌山の外部コーチを務める大坊(だいぼう)周司さん(45)は「あのバットは智弁の“非力部隊”のためにつくったもの」と明かす。

 大谷と黒川が使用したバットの重量は、NPBでも使用選手が見当たらない1200グラム以上。重心の位置がバットのヘッドの方ではなくグリップの近くにあるのも特徴だ。この重さと重心をうまく利用できれば、非力な選手でもバットの力を球に伝えられるという。

 元々は公式戦用ではなかった。20年ごろ、大坊さんが母校の盛岡大付(岩手)・関口清治監督から「トレーニングバットを作ってほしい」と依頼されたのが始まり。マスコットバットと同等の重さでグリップを太くしたいと言う。太くなると握力だけでは負担が大きくなるが、数をこなせば下半身を使って振れるようになる。この練習用バットで鍛えた同校が21年夏の甲子園で3本塁打を放ったことで、智弁和歌山などにも広がっていった。

 大坊さんと中谷仁監督は同学年。岩手で社会人野球の選手だった大坊さんは、楽天在籍中の中谷監督と04年に出会ってから浅からぬ交流があった。その中谷監督から予想外の提案を受ける。「このバットを公式戦で使えるようにしてほしい」。小柄な選手に持たせるためだ。楽天での現役時代に野村克也監督から「力がないならバットの重さを利用しなさい」と教えられており、極端に重いバットを巧打者に応用できると考えた。打球部を2ミリ削るなど規定内に収め、23年秋に公式戦用として承認された。

 最初にバットを与えられたのが大谷。1年秋に使ったが、その重量から「すぐにやめたる」と思った。ところが外野の間を抜く長打が出る。それを見た黒川も使い始めた。今春選抜で、その特異な形が話題になった。チーム打率・357は出場32校中トップ。木製バットを持つ2人が打線を活性化させた。

 中谷監督の発案から生まれた極重バット。木製バットが長距離打者だけのものではないと証明する春になった。 (河合 洋介)

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