田淵幸一氏が語る巨人再建論 四球&進塁打の重要性 捕手で培った観察眼で個々に合った指導法を

[ 2023年10月10日 06:00 ]

意気込みを語る阿部新監督(撮影・尾崎 有希)
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 2年連続Bクラスに終わった巨人は計17年間指揮を執った原辰徳監督(65)が辞任し、阿部慎之助新監督(44)が誕生した。時代の変革期を迎えた名門球団の、再建の道はどこにあるのか。自身も阿部新監督と同じ捕手出身で監督経験のある田淵幸一氏(77)が、企画「マイ・オピニオン」で巨人再建論を緊急提言した。

 巨人の球団史上、捕手出身監督は初だという。女房役というものは自然と人を見る目がたけてくる。気配り、目配り。阿部新監督には選手の性格を熟知した上で、指導方法の引き出しを増やしてほしい。私は血液型を用いたりもしたが、選手の性格を把握し、その選手に合った言葉に変える。もちろん4年間の2軍監督、コーチ経験は生きるだろうが、一国の将になったからにはさらに観察眼を働かせてほしいと思う。

 特に今の時代の若い選手と接するには、指揮官が頑固すぎてはいけない。同時に柔軟性も必要だ。楽天、阪神などを率いた星野仙一監督は「アメとムチ」の使い方が非常に巧みだった。これも選手の性格を熟知していればこそ。選手一人一人の意識改革は、性格を知ることから始まる。

 今季の巨人はチーム打率.252、164本塁打が12球団でトップ。しかし523得点は、優勝した阪神の555得点を大きく下回った。阪神の本塁打数は84本だったのに、なぜか。阪神がリーグトップの494四球を選んだのに対し、巨人は100個以上少ない365。そこに進塁打などが加わり、阪神は投打の歯車がかみ合った。岡田監督が選手の意識を変えたように、阿部新監督も「どうやって勝つか」の意識を共有し、それを植え付けることが重要だ。四球や進塁打の大切さを、私は西武時代に広岡達朗監督に教わった。その源流にあるのは巨人をV9に導いた名将・川上哲治監督だ。

 守護神・大勢を故障で欠き、リリーフ陣の役割を固定できなかったのも接戦に弱かった要因の一つだろう。戸郷に山崎伊、赤星ら先発陣は若い芽が出始めた。救援陣の役割と同時に4番・岡本和を中心とした打順や、捕手のポジションもある程度は固定したい。それは選手が試合に臨む心構えにもつながる。

 来年の開幕時に45歳の青年監督。原監督からさまざまなことを継承しつつ、たとえ失敗しても「俺はこういう野球をやる」との思いを貫く姿勢も必要だと思う。同じ捕手出身。来季は大いに注目したい。(スポニチ本紙評論家)

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