阪神日本一へ隠れキーマンは誰だ ダルも認めたプロウト評論家「お股ニキ」が挙げる注目の3人

[ 2023年10月10日 05:15 ]

阪神・坂本(2023年9月撮影)
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 18年ぶりのリーグ制覇を遂げ、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ(S)の開幕を18日に控える阪神。近本、中野、大山、佐藤輝、村上、大竹、岩崎ら、今季の「主役」以外に、注目すべき選手は誰なのか。パドレスのダルビッシュも認める「プロウト(プロの素人)」評論家・お股ニキ氏が、注目すべき「隠れたキーマン」を挙げた。(取材・構成=大林 幹雄)

【坂本】
 岡田阪神の土台となっていたのはディフェンス重視の野球。その中で今季、自己最多の84試合に出場し、村上、大竹のブレークも支えたのが坂本だった。お股ニキ氏は、特にフレーミング(※注1)と配球を評価する。

 「フレーミングは以前からダルビッシュ選手も“日本でもトップクラスでうまい”と推していたが、タイミングもやり方もバッチリ。配球面では球種、コースの選択に加え、投手の心理、気持ち、感覚が全て分かっている捕手という感じです」

 こうした特性の坂本と、制球力が高く球種も多い村上、大竹とのコンビネーションが見事にはまったという。

 「坂本選手が良さを引き出した。フレーミングがいいから、より際どいコースに(多くの球が)来るからフレーミングも生きる。配球では、直球に見せて変化球を落としたり、変化球に意識がいっていると思ったら直球でビシッと差したりなど、その強弱というか、高低差というか。緩急だけとも言い切れない押し引きが抜群」

 阪神は2人以外にも制球のいい投手が多い。「その投手陣の良さをより引き出している」と、CS以降の活躍にも期待を寄せる。

※注1=フレーミングとは、際どいコースのストライクを、球威や球の変化によってミットをボールゾーンに流されずに捕球する技術。コースから外れた球をストライクゾーンに見せようと、ミットを動かすだけの動作とは区別される。

【小野寺】
 攻撃陣においては、小野寺が特筆すべき選手に挙がった。「日本の野球は、去年くらいからボールが全然飛ばなくなっている(※注2)。投手のレベルも向上して投高打低の今の野球ではなかなか簡単には点が入らない」とした上で、育成出身の25歳に着目した。

 「小野寺選手の出塁や安打に期待したい。今年かなりヒットが出る打ち方になっている。表現が難しいが、ちょうど内野と外野の間に落ちる打球が飛ぶ打ち方になっているというか。だから好機では適時打を打ってくれるし、追い込まれてからは粘っておっつけてライト前に安打が出ているイメージが凄くあり、打率(.347)も残っている」

 岡田監督もシーズン終盤の9月18日に「出したら打つよ。ある程度はなあ」と話し、今季は左翼や中堅、時には三塁のバックアップ要員として重用。坂本同様、自己最多の43試合に出場しており、出塁率(.402)の高さも魅力だ。

 「1打席当たりの投球数は多いだろうし、今年の、結果として多くの四球を奪いにいく岡田野球のメンタリティーを持っている選手」と高く評価した。

 ※注2=NPBでは18~20年は1試合平均で1.74~79本の本塁打が出ていたが、21年は1.50本、昨年は1.35本と減り、今季は阪神が全日程を終えた4日終了時で1.29本。打球速度の割に飛距離が出ていないとの分析や、使用球の質が変わったとの指摘もある。

【西勇】
 最後に先発投手。2桁勝利7度を誇るベテラン西勇の、シーズン終盤の存在感をお股ニキ氏は強調した。

 「感覚論になってしまうかもしれないが、映像で見ていても、直球もカットボールもビシッときている。僕が(投手分析の上で)凄く重視している点です。本当に切れがあるというか。巨人を完封した試合(※注3)、打者は全部、カットボールなど変化球にも差し込まれていた。必死に前に飛ばそうとするとゴロになってしまう」

 前半戦は5勝5敗、防御率4.83と低調。2軍での再調整を経て本来の力を取り戻した。8、9月は5試合、35回2/3を投げて3勝0敗、防御率1.01と圧巻の内容。17回連続無失点でレギュラーシーズンを終えた。

 「長年エースでやってきた西勇選手が、元の状態に戻った。阪神らしい投手の一人というか、そんなに(上背が)大きくはなくて150キロ出るわけではないですが、切れも制球も良く球種も多くビシビシときて、坂本選手とも、あうんの呼吸を見せている」

 勝負どころで調子を上げてきたチーム最年長の32歳右腕。ポストシーズンでも頼りになりそうだ。

※注3=9月12日の巨人戦(甲子園)で9回117球を投げて2安打完封。二塁すら踏ませない投球でチームを優勝マジック3に導いた。

 ○…お股ニキ氏は、CSファイナルSの先発ローテーションを予想。相手が広島の場合は(1)村上(2)伊藤将(3)大竹(4)西勇(5)才木(6)青柳で、DeNAの場合は大竹と西勇の順番が入れ替わる。短期決戦での「第2先発」要員候補にはビーズリーを挙げ、「スタミナがあるわけではないが、米国のデータを見ても、カットボールやフォークを身に付ければバウアーの下位互換のような投球はできるというイメージだった」と好印象を口にした。

 ◇お股ニキ(@omatacom=おまたにき)本名、生年月日、出身地は非公表。「ニキ」はネット用語で「兄貴」の意味。本格的な野球経験は中学の部活動まで。15年にダルビッシュ(当時レンジャーズ)に関してつづったツイートが偶然、本人の目に留まったのをきっかけに親交がスタート。ツーシームを助言した際には「お股ツーシーム」として公認されるなど、「プロウト」としての道が開けた。球界で理論を取り入れる選手が急増し、オンラインサロン(会員制ウェブサービス)に40人以上のプロ選手が加入。プロ、アマ問わず、千賀(メッツ)、藤浪(オリオールズ)に次いでメジャーを目指す多くの投手の個人指導を行っている。著書に「セイバーメトリクスの落とし穴」(光文社新書)、「ピッチングデザイン」(集英社)、「ダルビッシュ最強投手論」(宝島社)などがある。

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