【昭和の甲子園 真夏の伝説(7)】エース八木沢が感染症…試練乗り越え作新学院が史上初の春夏連覇
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甲子園の熱い夏が始まった――。第104回全国高校野球選手権が6日に開幕。幾多の名勝負が繰り広げられた聖地で、今年はどんなドラマが生まれるのだろうか。今回は「昭和の甲子園 真夏の伝説」と題して、今も語り継がれる伝説の試合を10回にわたってお届けする。
甲子園春夏連覇を成し遂げたのは7校(大阪桐蔭は2度)。初めての偉業は1962年(昭和37年)に出場した作新学院(北関東・栃木)だった。センバツは制球力抜群のエース八木沢荘六(元ロッテ)が準々決勝・八幡商(京滋・滋賀)との延長18回引き分け再試合など接戦を制しV。連覇を目指し乗り込んだ夏は開会式当日に八木沢が赤痢と診断され病院に隔離されるアクシデント。背番号「11」の加藤斌(たけし=元中日)が奮闘。全5試合に先発し決勝を含めて3完封。史上初の勲章をつかみとった。
~開会式の入場行進直後 エースがまさかの“赤痢”~
1962年7月30日北関東大会決勝、作新学院は鹿沼農商(栃木)を10―1の大差で下し、春夏連続の甲子園出場を決めた。この試合、先発、完投したのは加藤斌。八木沢は前日の準決勝・前橋(群馬)戦で完封勝利。エースを温存しての貫禄の勝利を手土産に聖地に乗り込む最強軍団に死角はないと思われた。
8月10日作新学院は開会式の入場行進を終え、練習グラウンドに移動して調整。翌日の気仙沼(東北・宮城)との1回戦に備えていた。八木沢が急きょ西宮市内の宿舎に呼び戻される。その場で“赤痢”であることが告げられ、芦屋市内の病院に搬送された。翌11日付のスポニチで八木沢は「4日の夜明けから下痢気味だった。熱はないし腹痛もなかったのでたいしたことはないと思っていた。赤痢といわれてびっくりした。一人になると寂しいですね」と語っている。エースの感染症が判明したことで作新学院ナインと同宿の甲府工(西関東・山梨)ナインは緊急検査を受けた。大会本部では特別処置として11日の第1試合「作新学院―気仙沼」を2日後の13日第4試合に繰り下げた。佐伯達夫副会長は「検査の結果が11日午前中でないと分からないということなので特別に日程を変更した。医師からはっきりした診断がおり作新学院ナインが野球が出来る状態じゃないというならば棄権も致し方ない」。春夏連覇どころか出場すら危ぶまれる事態。24時間後、検査の結果は八木沢以外のメンバーは全員陰性。最悪の事態は避けられたが「エース不在」の現実からは逃れられなかった。
~背番号11耐えるも打線ガチガチ 薄氷の勝利~
2日後の13日第4試合。気仙沼戦のマウンドに上がったのは加藤だった。センバツでは延長16回の激闘となった準決勝・松山商(愛媛)戦で八木沢を救援。7回を4安打無失点で勝利に貢献している。春夏通じ甲子園初出場の気仙沼との実力差は歴然としていた。ところが打線がガチガチになり拙攻の連続。初回、1点を先制してなお1死二、三塁の好機。5番石井の高いバウンドの三ゴロで三塁走者の柳田はスタートを切れない。3回には佐山、4回には石井が熊谷のけん制で憤死。試合の流れを失った。
さらに作新を想定外の出来事が…。4回1死一、三塁。加藤がセットポジションから投球しようと動き出した瞬間、打席の5番・梅沢がタイムを求めるような仕草で打席を外して後ろを向いてしまった。主審はタイムをかけない。リズムを崩した加藤は緩い球で本塁へ投げた。その時、一塁の塁審が「ボーク」とコール。三走の熊谷が喜びながらホームを踏んだ。同点。試合は膠着(こうちゃく)状態に入った。加藤が耐える。5回から9回までわずか1安打。気仙沼にチャンスすら作らせない。延長11回2死二塁から伊藤が中前適時打。これが決勝点。連覇へのスタートは薄氷の勝利だった。
~八木沢の圧倒的な制球力で無敵だったセンバツ~
センバツの作新学院は強かった。八木沢を中心に接戦をモノにする堅実な戦いで勝ち抜いた。八木沢は初戦こそ久賀(山口)に6安打2失点と手こずったが、無四球完投。準々決勝・八幡商戦では延長18回を一人で投げ抜き引き分け。8安打を許したが、14奪三振。無四球でつけいる隙を与えなかった。翌日の再試合では2回途中から登板し無失点。25打者を3安打13奪三振、また無四球。準決勝は加藤との継投で延長を制し、決勝でも日大三(東京)に完封勝ちした。八木沢の圧倒的な制球力をベースにした点を与えない野球でセンバツ制覇。その八木沢はベンチにいない。夏の戦いは加藤の右腕と打線の爆発力にかかっていた。
~超高校級バッテリーの中京商撃破で連覇に王手~
2回戦、慶応(神奈川)戦の試合前、八木沢が大会本部を訪れ退院の報告と診断書を提出した。スタンド下通路でナインと合流、ベンチに入った。エースの復帰に勇気づけられた打線が奮起する。初回柳田の中前打で先制すると3、4、5回に加点。終わってみれば14安打7得点の快勝だった。準々決勝でも岐阜商、大会屈指の左腕・長縄善丞に襲いかかり、8回一挙7点の猛攻で蹴散らした。準決勝の相手はV候補・中京商(現中京大中京=愛知)。剛球左腕の林俊彦と後に中日の主砲として1876安打、277本塁打の数字を残す木俣達彦の「超高校級バッテリー」とぶつかった。7回まで0―0。8回2死二塁、大橋一男の当たりは緩いライナーとなって遊撃の頭を越え、芝生に落ちた。作新待望の先取点。この回1点を追加した。加藤には2点あれば十分だった。9回2死、主砲の木俣を中飛に打ち取りゲームセット。3安打完封勝ち。史上初春夏連覇に王手をかけた。
~1―0完封 加藤斌 スポニチに手記を寄稿~
8月19日「決勝戦」作新学院―久留米商(福岡)先発はこの試合も背番号「11」の加藤。サイドスローからのキレのある直球がさえた。7回まで4安打無失点。その裏、打線が久留米商の左腕・伊藤久敏をとらえる。安打と失策で得た無死一、二塁の好機で大橋の三塁線への送りバントが内野安打となる。
無死満塁。田中健次、加藤が倒れ2死となったが、主将・中野孝征がしぶとく三遊間を割る。待望の1点。加藤は淡々とアウトを重ねる。9回2死から中前打を許したが、一塁走者が盗塁失敗。あっけなく試合は終わった。加藤は感情を抑えながら笑顔で捕手・田中の手を握った。
加藤は翌20日スポニチ本紙に手記を寄せ「八木沢君の右腕でセンバツ優勝を成し遂げたのだから今度こそ僕の力で優勝を成し遂げてやろうと思っていた。それが夢ではなく現実となったのだからこれ以上の喜びはありません。準々決勝から八木沢君がベンチに入り、横にいるだけで安心して投げることができました」と綴っている。夏は1度も登板の機会がなかった八木沢が優勝盾を胸に場内を一周した。2人のエースでつかんだ史上初の偉業。その瞬間を見届けた大観衆は万雷の拍手で讃えた。
~「2人のエース」の物語 悲しい最終章~
「2人のエース」は卒業後、別の道を歩んだ。八木沢は早稲田大へ進学。東京六大学野球で3度の優勝に貢献するなどエースとしてリーグ通算24勝。ベストナイン2回、主将も務めた。66年の第2次ドラフトで東京オリオンズ(現千葉ロッテ)から1位に指名され入団。4年目の70年には43試合に登板し10年ぶりのリーグ優勝に貢献した。73年10月10日の太平洋(現埼玉西武)戦ダブルヘッダー第1試合(宮城)で史上13人目の完全試合を達成。通算71勝。引退後は西武の投手コーチとして王国を支えた。
加藤は甲子園V投手の勲章を手にプロの道へ進んだ。中日1年目1勝。2年目には31試合に登板。3年目の飛躍が期待されたが65年1月3日、作新学院同窓会からの帰途、栃木県今市市の日光街道で運転を誤り車は大破。救急搬送されたが帰らぬ人となった。享年20。盟友・八木沢はメディアの取材に「なんといっていいのか分からない。惜しい男を亡くしたという寂しさでいっぱいだ」と声を詰まらせた。同6日の告別式では弔辞を読んだ。「2人のエース」の物語は静かに幕を閉じた。
~作新からは4人プロ入り 後の広島エース安仁屋もいた~
〇…1962年夏の甲子園出場選手のなかでプロ入りしエース級の活躍をしたのは沖縄高(現沖縄尚学)の安仁屋宗八。初戦で広陵(広島)に敗退も、社会人を経て64年広島入り。通算119勝を挙げ昭和40年代のカープを支えた。1970年代後半から全国屈指の強豪となるPL学園(大阪)はこの大会が夏初出場。2年生の戸田善紀は翌63年阪急入り。75、76年に2年連続2桁勝利で阪急の3連覇に貢献した。同じPLからは中塚政幸が中大を経て67年ドラフト2位で大洋入り。通算1440安打。61年夏準々決勝で浪商・尾崎と対決した中京商の木俣達彦は高校最後の大会では準決勝で作新学院に敗退した。64年に中日入り。正捕手として1876安打を記録している。作新学院からは八木沢、加藤のほか4番の高山忠克が63年国鉄(現東京ヤクルト)入り。主将の中野孝征が社会人を経て67年ドラフトでサンケイアトムズ(現東京ヤクルト)から1位指名された。
【昭和37年出来事】5月=国鉄常磐線三河島事故160人死亡 8月=マリリン・モンロー死去 10月=ファイティング原田世界フライ級王座獲得、ケネディ大統領キューバ海上封鎖▼プロ野球=セ阪神、パ東映▼ヒット曲=「いつでも夢を」「可愛いベイビー」
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