無観客スタジアムで響く「タッチボール」の声 一見の価値ある楽天“本気のシートノック”

[ 2020年6月10日 09:00 ]

守備練習中の選手にノックを打つ楽天・三木監督(球団提供) 
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 プロ野球の練習試合が始まって約1週間が過ぎた。9日後には待望の開幕を迎える。

 打球音や、捕球音、審判のコール。無観客のスタジアムでは「野球の音」が普段以上にはっきりと聞こえる。試合中のベンチの盛り上がりや、外野手の打球に対する声の掛け合い。ブルペンの投球練習の捕手の捕球音なども、ソーシャルディスタンスを意識してオープンスペースに特設されたネット裏の記者席まで届く。

 久しぶりに耳に届いたのは「タッチボール」の言葉だった。3日に取材した横浜スタジアムでのDeNA―楽天戦。試合前の楽天のシートノックの最中だった。「タッチボール」は各塁への送球を「タッチしやすい高さに投げろ」という意味が含まれている。塁が詰まっていない状況でのタッチプレーを想定し、タッチしやすい高さへの送球を意識付けるための声。野球経験者の記者にとっては耳慣れたフレーズだが、プロ野球のノックではそこまで頻繁に聞かなかった。だが、楽天のシートノックの最中、この声がいたるところから飛んでいた。

 当日のテレビ中継で解説者の佐伯貴弘氏(50)が、このノックを「感動した」と絶賛していた。外国人選手ですら打球をのんびり追うこともなく、山なりの送球もなし。プロ野球では試合前ノックは「形式的」になりがちだが、楽天のノックにはゆるみが一切なく、高校野球のようだった。三木監督は佐伯氏の絶賛を「ありがたい言葉」と感謝。そして「去年(2軍監督として)ファームでもそこをしっかりやってきた。キャッチボール、ウォーミングアップ、シートノックの3つは徹底した。その部分は意識してやることによって、少しの間ですぐに(質が)上がる」と説明した。

 プロ野球選手の本気のシートノック。送球技術の高さ、中継プレーでのカットマン(中継に入った野手)のボールの持ち替えの速さなど、一見の価値あり。残念ながら、このノックは、選手をアップで追うテレビの映像よりも、全体を見渡すことができる位置から観察するのがベスト。美しさや凄みが、より伝わりやすい。

 通常開催ならばファンの皆さんは、ビジターチームの打撃練習時から入場が可能。試合直前のシートノックも見ることができるはずだが、無観客の今季はしばらくお預けになる。ファンの皆さんの球場観戦が始まり、このノックを見ることができるようになる頃には、この「タッチボール」という声が、楽天にどんな効果をもたらしているのだろう。(記者コラム・春川 英樹)

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2020年6月10日のニュース