表彰式で感じた、西武・辻監督の「選手層」発言の真意

[ 2019年11月28日 09:00 ]

今シーズンを振り返る辻監督(撮影・尾崎 有希)
Photo By スポニチ

 華やかなステージに、タイトルホルダーが並んだ。26日に行われたプロ野球の年間表彰式「NPB AWARDS 2019 supported by リポビタンD」。パ・リーグの打撃タイトルは6部門中5部門が西武の面々だった。

 MVPとのダブル受賞だった首位打者の森をはじめ、最多安打の秋山、本塁打王の山川、打点王の中村、そして盗塁王の金子侑。リーグ連覇の原動力になった圧倒的な攻撃力を裏付ける光景だった。っそれぞれに強みを持った選手が並ぶ打線は球界随一。だが、1カ月ほど前は「選手層の薄さ」が声高に指摘されていた。

 ソフトバンクに4連敗し、1勝4敗でCSファイナルS敗退。辻監督は敗戦直後、こう口にした。「色んな選手が故障したりした中で、この時期にみんなが揃って力を発揮する。(相手の選手層の厚さを)認めないといけない。投手陣もそうだが(野手の)選手の層(が薄い)。若い選手を育てないと」。2年続けて短期決戦でソフトバンクに完敗した衝撃の強さに投手のみならず、野手の「選手層」も敗因として各方面で論じられた。

 チーム防御率は2年連続リーグワースト。投手陣、特に先発陣の層が薄いのは確かだ。最大の強化ポイントは投手陣の整備。ただし、安定感を取り戻した増田、新生・平良、短期決戦は足の肉離れを押して投げた平井ら、救援陣は形が見えてきた。信頼しうる先発の柱が出現すれば、シーズン、そして短期決戦の戦いも計算が立つはずだ。

 一方で、野手の選手層については、敗因になるほどの薄さではないと感じる。しかも、辻監督はそもそも、試合中に野手を必要以上に交代させる戦いをしない。不動のレギュラーが仕事をまっとうして勝ち続けるのが本物であり、そういう野球が本当の「常勝軍団」再建につながる、という信念を持っていると感じている。
 CS敗戦直後、「選手層」について口にした指揮官は、実はこんな言葉も口にしていた。「もう1つ上にいくためには、選手個人が引き出しを増やしていかないといけないと思う。そうすれば、もっと強いチームになれるんじゃないか」。強くなるべきはまず、レギュラー。その絶対的レギュラーが、普段通りに戦って勝ってこそ本当の強さ、と考えているフシがある。

 山川、森、金子侑らがここ2、3年でレギュラーに育った。ここから数年、円熟味を増していくだろう。その間に次のレギュラー候補が生まれ、育てていけばいい。絶対的レギュラーが君臨し、若い野手が「常勝軍団」を継承する。そういう長期的なビジョンが指揮官にはある。

 短期決戦で敗れた敗因は、何よりも投手力であることは間違いない。タイトルには届かなかったが外崎、源田もいまやリーグを代表する野手。不動のレギュラー陣で2年分の悔しさを晴らした時、西武が再び「常勝軍団」と呼ばれる時だと思っている。
(記者コラム・春川 英樹)

続きを表示

2019年11月28日のニュース