楽天本拠、コボスタの天然芝化 リスク承知で踏み出した一歩

[ 2015年12月18日 08:00 ]

左中間スタンドの後方に「公園席」を新設し、その中に観覧車が新設されるコボスタ宮城

 2004年9月某日。当時、楽天本社があった六本木ヒルズの車寄せで、ある人物を直撃取材した。ライブドアと球界参入を争っていた三木谷浩史社長(現球団オーナー)だ。当時20代でプロ野球担当歴も浅かった記者を相手に足を止め、10分以上も対応してくれた。

 一通り取材が終わった時だ。突然「メジャーの球場で観戦したことあります?」と聞かれた。「ないです」と返すと、米国留学経験がありメジャー通の三木谷社長は少年のように目を輝かせて話し出した。「メジャーは球場に個性がある。形も左右対称じゃないし、ほとんど天然芝。フェンウェイパーク(レッドソックス本拠地)のグリーンモンスター(約11メートルの巨大な左翼フェンス)は本当に格好いい」。当時の球界は閉鎖的なイメージで、現在に比べて各球場の個性も少なく「こんな人が球界に入ればおもしろいだろうなぁ」と新鮮に感じたのを覚えている。

 今オフ、コボスタ宮城が大きく生まれ変わる。球団は新規参入した05年から2年間で70億円をかけ老朽化していた本拠地を大幅に改修。その後も毎年のように改修を重ねてきたが、4年ぶり2度目の本拠地開幕の来季に向け、再び大改修に着手する。総額30億円。左中間に設置する観覧車(来年5月に完成予定)やスコアボードのLED化、そして大きな目玉は三木谷オーナーの球団創設当初からの悲願で、パ・リーグ本拠地で唯一となる天然芝への張り替えだ。

 数年前から採用を本格的に検討してきた天然芝。実は今年7月の時点では寒冷地での芝の管理など技術的な問題が解消できず、来季も人工芝を継続する方向で調整していた。だが天然芝の実現に強い思いを持つ三木谷オーナーが球団に「最後まで諦めないでほしい」と要請。検討を重ねた結果、9月に寒冷地の北米などで実績があり、天然芝の下から温風を吹き込んで土壌温度や水分を管理する「サブエアーシステム」の導入にメドが立った。同月中旬。都内で同オーナーも出席した球団取締役会で天然芝の導入が正式決定した。

 歴史があり「野球は屋外、天然芝の上で」という文化が根付いている米国ではメジャー30球団中、本拠地で人工芝を採用しているのはブルージェイズのロジャーズ・センターとレイズのトロピカーナ・フィールドのみで、ともにドーム球場。屋外の本拠地の全28球団が天然芝だ。祖父母、父母、子の3世代が芝と土のにおいが漂うボールパークの思い出を共有する。

 日本は米国に比べ雨が多く、日程消化やイベントなど採算を最重視するならドームや人工芝を採用した方がいい。リスク承知で楽天が踏み出した一歩。記者は支持する。(記者コラム=山田 忠範)

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