イチ子供たちに人生訓「悔しさが僕を支えている」

[ 2013年12月24日 05:30 ]

イチローは表彰式を終えファンの声援に手を振りながら引き揚げる

 ヤンキースのイチロー外野手(40)が23日、故郷の愛知県豊山町で行われた「第18回イチロー杯争奪学童軟式野球大会」の閉会式に出席。恒例のあいさつでは、困難を乗り越えることの大切さを子供たちに説いた。大型補強で外野手が飽和状態となったヤ軍では来季の構想から外れ、自身の去就はいまだ不透明。大きな困難に直面する中、独特の言い回しで自身を奮い立たせた。

 光と影。それは困難を乗り越えて数々の記録を打ち立ててきたイチローの人生訓だった。地元小学生へのあいさつ。「今のみんなにはちょっと難しい話になる」と前置きしながら、保護者にも「覚えておいてほしい」と訴えた。

 「失敗して、負けて抱いた悔しい思いが、今の僕を支えていると断言できます。今、目の前にある壁や困難を乗り越えられれば、将来の大きな支えになる」

 今季はメジャー13年目で自己最低の打率・262。日米通算4000安打の偉業を成し遂げたものの「とても苦しいシーズンでした」と振り返った。ヤ軍は今オフ、大型契約でエルズベリーとベルトランを獲得。外野手はレギュラークラスが飽和状態となり、来季41歳を迎える自身はトレード候補に挙がっている。そんな状況でも弱音は吐かなかった。

 成功の裏には必ず失敗があることを、誰より強く感じる。イチローは4000安打達成時に「8000回以上は悔しい思いをしている。それと常に向き合ってきた。誇れるとしたらそこじゃないかと思います」と語っていた。この日も「4000本という、いい結果ばかりに目がいきがちだけど、倍以上の失敗がその中にある。僕には今、悔しさしか残っていません」。悔しさこそが成長の糧となることを強調した。

 努力はうそをつかない。ストイックに自らを鍛え上げてきた孤高の天才打者は「途中で手を抜くと自分自身で可能性をつぶしてしまう。だから小さなことを重ねていってほしい」と言い、こう続けた。「野球を通していろんなことを学んで、吸収して、強くて、人の痛みが分かる優しい大人になってくれることを願っています」

 栄光の中で、傷つき、もがき、それでも強くあり続けたい。「こういうことをみんなに伝えながら、自分自身を客観的に見て、教育しているような感覚もある」。逆境から新たな栄光へ。子供たちへのエールは、自分自身を鼓舞する言葉でもあった。

 【過去のイチロー杯での金言】
 ☆撲滅(06年)野球によるいじめの撲滅法を提案。「周りにいじめられている人がいたら“一緒に野球をやろうよ”と声を掛けてもらいたい」

 ☆まね(07年)自身のプレーを子供がまねすることを止めないように監督や保護者にお願い。「まねをしようとする時が一番成長する時。その姿勢を大事にしてほしい」

 ☆過程(09年)10年連続200安打を公約し「結果ではなくて過程で自分がどうあったかが凄く大事」。保護者にはダイエットを例に過程と継続の重要性を訴える。

 ☆環境(10年)野球ができる環境の整備を保護者にお願い。子供たちには「家の中では得られないもの、素晴らしいものを野球を通じて感じていると思います。そのことを友達に伝えてほしい」

 ☆決断(12年)志願のヤ軍移籍とオフの残留を引き合いに「難しい局面になった時に必ず自分で決めてきた。難しいことに立ち向かう姿勢があれば野球はうまくなる」

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2013年12月24日のニュース