奇想天外な勝負師 新十両昇進・宇良“居反り解禁”Xデーは?

[ 2016年4月3日 08:20 ]

歴代4位のスピード十両出世を果たした宇良

 今から楽しみである。大相撲夏場所(5月8日初日、両国国技館)で新十両昇進が決まった宇良(23=木瀬部屋)のことだ。1メートル72、120キロの小兵。昨年春場所の初土俵からわずか7場所、歴代4位のスピード十両出世を果たした。

 宇良と言えば、居反り。相手の懐にもぐり込んで、背中に乗せて担ぎ上げ、後方に反って倒すダイナミックな技だ。関学大時代、大男相手に鮮やかな居反りを決めた映像がテレビ番組で紹介され、一躍脚光を浴びるようになった。プロの土俵で、いつその大技が飛び出すか。我々メディアは初土俵以来、常に彼の取組を注視している。

 現在のところまだ披露されてはいないが、Xデーは近いかもしれない。既に部屋での稽古では3回ほど決めているという。先日の新十両昇進会見の時、宇良は「十両の方が出やすいと思います。相手が大きいですから」と言った。相手が大きければ、これまで以上に、相手の懐に入る相撲が多くなる。そうなれば、居反りのチャンスも増えるということだ。カメラマンたちはさらに神経を尖らせて、宇良の動きを追うことになりそうだ。

 どうしても居反りにばかり話題が集中しがちだが、実は居反りなしでも彼の相撲はおもしろい。一言で言えば、奇想天外だ。先場所6日目の十両・天風戦では相手の視界を遮るように右手を前にかざして立つと、すぐに沈んで左から背後に回り込む忍者のような早技を見せた。負けた天風は「消えた。瞬間移動だ」とただただ驚いていた。14日目の元学生横綱・大輝戦では劣勢の状況から一瞬の隙を突いて、相手の右足を取って逆転した。相手との距離の取り方、低い姿勢からの鋭い跳び込み、片足タックルのような足取り。小学校、中学校時代に取り組んでいたレスリングの要素を大胆に取り入れたスタイルは従来の大相撲にはなかったものだ。

 普段はおっとりした口調で丁寧に質問に答える好青年でもある。だが、先場所中、意外な場面に出くわした。ある取組での技について「あの狙いは何だったんですか?」と聞いた時だ。宇良はやや表情を硬くして「作戦について細かく話すのは好きではないんです」とはっきり言った。

 勝負師である。小さい体でどう戦うか。日々考えて、厳しく稽古する。そんな男だから、自身の技や策には人一倍強いプライドがある。安易に語ろうとは思わない。おそらくまだ見せていない技や策もたくさんあるだろう。

 テレビの前のファンの方々も今後、宇良の取組を見る機会が増えると思う。是非注目して見てほしい。居反りを見ることができたらラッキー、見ることができなくても決して損した気分にはならないと思う。 (柳田 博)

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2016年4月3日のニュース