羽生 失速を糧に…4度ミスも昨季までの自己ベスト超え「また来年」

[ 2016年4月3日 05:30 ]

4回転サルコーで、手を付く羽生

フィギュアスケート世界選手権第3日

(4月1日 米マサチューセッツ州ボストン)
 ショートプログラム(SP)首位の羽生結弦(ゆづる、21=ANA)が、大逆転を許して銀メダルに終わった。男子フリーで演技後半の4回転サルコーで転倒するなど、ジャンプで4度もミス。合計295・17点で2季ぶりの金メダルには届かなかった。SPで12・04点差だったハビエル・フェルナンデス(24=スペイン)が、世界歴代2位の314・93点で連覇を達成。初出場の宇野昌磨(18=中京大)は264・25点で7位だった。

 作り笑いを浮かべ、羽生が必死に戦っていた。SPで2位に史上最大の12・04点差をつけながら、まさかの銀メダル。「悔しいです!はい!」と明るく振る舞ったが、心はたぎっていた。「(表情には)出していないです。今、出しちゃうと自分を抑えられなくなっちゃう」。本音が漏れた時、唇は震えていた。

 冒頭の4回転サルコーでバランスを崩すと、演技後半に組み込んだサルコーとトーループの4―3回転はサルコーで転倒した。「後半のサルコーにすごく不安があった」。実は、今季序盤から痛みがあった左足の状態が年明けに悪化。左足で踏み切るトーループは負担が大きいため4回転のトーループを1つ減らし、サルコーを増やさざるを得なかった。

 ただ、右かかとを痛めていたフェルナンデスはそれでも完璧な演技で逆転。一方で、元世界王者のチャン(カナダ)はフェンスに激突した。自らのミス連発も含め、想定外のことが渦巻くリンク。「やっぱり世界選手権って凄くドラマがある」。そして、語気を強めた。「この舞台で金メダルを獲れないようじゃ、まだまだだな」。決してケガは言い訳にしなかった。

 「あの日」から5年が経過した。11年3月11日、東日本大震災で当時、仙台を拠点にしていた羽生も被災。以来、毎年3月11日には発生した午後2時46分に合わせ黙とうする。カナダ・トロントが拠点で、現地では午前0時46分。夜が深まる中、東北の方角を向き、目を閉じて静かに祈った。

 1月、岩手でアイスショーに出演し、小中学生とも触れあった。「現役スケーターの羽生結弦として支援できるのが、このようなこと」。競技優先で今は直接的な復興支援は難しい。だから、氷上で示してきた。中国杯での激突事故や腹部手術があった昨季は逆境に立ち向かう勇気を、世界最高得点連発の今季は現状に満足しない姿勢を。

 狙っていた世界一奪回には届かなかったが、ミスを連発しながら昨季までの自己ベスト293・25点を超えたことが成長の証だ。「また来年、頑張りますよ。それだけ」。幾多の敗戦を糧にしてきたスケート人生。最大目標の18年平昌五輪へ、羽生がまた飛躍のきっかけをつかんだ。

 ▼ブライアン・オーサー・コーチ ユヅル(羽生)の出来には驚いている。彼は結果に失望していた。(演技前に)ナーバスになっていた。

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