ジョコに惜敗…錦織、終戦も世界王者から今大会初1セット奪取

[ 2014年11月16日 05:30 ]

シングルス準決勝でノバク・ジョコビッチに敗れ、引き揚げる錦織圭

男子テニスATPツアー・ファイナル第7日 準決勝

(11月15日 英国・ロンドン)
 No・1の壁はやはり高かった。世界ランキング5位の錦織圭(24=日清食品)は準決勝で同1位のノバク・ジョコビッチ(27=セルビア)に1―6、6―3、0―6で敗れた。室内コートでは圧倒的な強さを誇る相手に敗れ、07年のダビド・フェレール(スペイン)以来となる初出場での決勝進出はならなかった。日本人初のトップ10入りや全米オープン準優勝など、歴史を塗り替え続けた錦織の今季が幕を閉じた。

 王者ののど元に刃を突き立てた。しかし、力んだ手元は最後のとどめを刺し損ねた。最終セットの第1ゲーム、ジョコビッチのサーブで15―40。錦織にいきなり訪れた2本のブレークチャンスが勝負の分岐点だった。

 1本目はフォアがネットにかかって取り逃す。30―40。あと1回残されたチャンスで、錦織は得意のバックのストレートで決定打を狙いにいった。決まっていれば試合の流れが大きく錦織側に振れたはずのショット。しかし、勝負を懸けた一球は、大歓声の代わりに乾いた音を立ててネットを叩いた。

 世界No・1はそうそうチャンスを与えてくれない。流れは一気にジョコビッチに傾き、直後のゲームでブレークを許すとそのまま突き放された。最終セットまでもつれればツアー1位の勝率を誇る錦織。しかし、4大大会通算7勝、ツアー通算600勝以上を挙げ、室内コートでは2年間負けなしの強さを誇るジョコビッチは一枚上手。「錦織のプレーは素晴らしかった。厳しい試合だったが、勝てて良かった。錦織にとっては大事な場面でダブルフォールトがあったのが痛かっただろう」と熱戦を振り返った。

 錦織は第1セットは相手のサービスゲームで2ポイントしか奪えず、たった23分で落とした。第2セットに入ると自分から仕掛ける展開が増え、フォアの強打が火を噴き始めた。第8ゲームで2度目のブレークに成功。このセットを取り返した。ジョコビッチは今大会初めてのフルセットだったが、最後は粘り腰を発揮した。

 約1カ月前、錦織はランキング上位にいる現状について「怖いというか不思議な感覚」「今は違和感しかありません」と自らのブログで心境をつづっていた。それがこの大会中には「自信もついてきて、ここにいることが不思議とは感じない」と変わってきた。大会を迎えるにあたって、95年に準優勝しているマイケル・チャン・コーチから「(年間獲得ポイントが)5位でここにきたんだ。ここにいる価値のある選手なんだ」と自信を持つことの大切さを説かれた。「すり込まれた」と苦笑いした錦織に気後れはなかった。

 ナダルが欠場したため、錦織は今大会で4番目の上位選手。その順位通りに4強進出を果たし、チャン・コーチのいう「価値」を証明した。世界ランクトップ10入り、4大大会ベスト4以上、そして最終戦出場とシーズン当初に抱いていた目標は全てかなえた。敗者の錦織にも送られた退場際の大きな拍手が、その“価値”を物語っていた。

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