引きこもり乗り越え…スピードスケートから力士転身

[ 2012年2月15日 06:00 ]

第2新弟子検査に臨む大嶽部屋の茅野

 体の小さな入門希望者を対象にした大相撲春場所(3月11日初日、大阪府立体育会館)の第2新弟子検査が14日、東京・両国国技館で行われ、5人が体格基準(1メートル67、67キロ以上)をパスし、運動能力テストも通過した。異色な存在は、スピードスケートから転向した茅野峰大(18=大嶽部屋)。中学卒業後は進学せずに3年間を過ごしたが、力士が稽古している姿に感化されて入門を決意した。内臓検査を経て、春場所初日に正式に合格の運びとなる。

 銀盤で鍛えた足腰がさえた。体格基準に満たない入門希望者が対象の第2検査は運動テストで一定基準をクリアすれば合格となる。1メートル75、68キロの茅野は50メートル走やハンドボール投げなどを無難にこなし、見事に検査をパス。角界入りへ向けての第一歩を歩み始めた。

 相撲経験はなく中学までの土俵は銀盤だった。小学1年からスピードスケートを始め、中1では3000、1500メートルの2種目で全中大会に出場。相撲に全く縁のない競技からの転身に、相撲協会広報部も「過去にスピードスケート出身の入門は記憶にない」と話す。

 挫折も味わった。全中出場後に「学校に行くのが嫌になった」と自宅に引きこもることが増え、ニート生活が続いた。高校に進学せず無駄に3年間を過ごしたが、転機は昨年11月に訪れた。たまたま九州場所の中継を観戦すると、大嶽部屋の力士たちが元気に相撲を取っている姿が視界に入った。「前から力士になりたかった。大嶽部屋は明るい部屋で自分も入りたいと思いました」。今年1月に自ら大嶽部屋に直接電話し、入門が決定。元横綱・大鵬の納谷幸喜さんからは「(自分は)体が小さくても横綱になった。がむしゃらに頑張れ」と激励されたという。

 発奮材料はほかにもあった。城北小、上諏訪中の先輩、酒井裕唯(ゆい、24=岐阜ク)が12日に最終戦を迎えたスピードスケートショートトラックW杯で日本人初の総合優勝を飾った。「実家も近くなのでうれしい」。格闘への道は平たんではないが「大鵬さんや親方のような力士になりたい」と茅野。異色の挑戦がスタートする。

 ◆茅野 峰大(ちの・たかひろ)1993年(平5)4月6日、長野県諏訪市出身の18歳。諏訪市城北小1年からスピードスケートを始めて上諏訪中1年では全国中学校大会に出場した。1500メートル、3000メートルの2種目に出場し準決勝で敗退。スケートで好きな選手は加藤条治、清水宏保。好きな力士は朝青龍。家族は両親と姉、妹。1メートル75、68キロ。

 【角界他種目転身メモ】

 ☆野球 近鉄の投手だった元十両・土師(はじ)や81年夏の甲子園でベスト8になった今治西のメンバーだった元三段目・青菜(現松ケ根部屋マネジャー)らがいる。

 ☆水泳 大関・貴ノ花(故人)は中学時代にバタフライの中学新を樹立してメキシコ五輪代表候補といわれていたが「水泳ではメシが食えない」と角界へ。

 ☆陸上 錣山部屋の三段目・大地は中学時代に砲丸投げでジュニア五輪を制した実績を引っ提げて入門。
 
 ☆ラグビー 強豪・八幡工高を中退して入門した元関脇・蔵間(故人)や、現役では尾道高で高校日本代表候補だった三段目・北勝花がいる。

 ☆レスリング 元幕下・宮内(宮内輝和氏)は幻のモスクワ五輪代表。十両・旭日松は04年全国中学レスリング選手権85キロ級で優勝。

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