悪夢の一発失格から5日…ボルト、汚名返上だ!

[ 2011年9月3日 06:00 ]

<男子200メートル準決勝>フライングせずスタートしたボルト(左から2人目)は余裕の決勝進出

陸上世界選手権第7日 男子200メートル

(9月2日 韓国・大邱)
 男子100メートル決勝でフライングによる一発失格となったウサイン・ボルト(25=ジャマイカ)が2日、200メートルの予選に登場。全体1位の20秒30で通過したあと、準決勝でも危なげない走りで2組1位となった。“世紀のフライング”から5日。100メートル同様に世界記録(19秒19)を保持する200メートルでは今季世界最高の19秒86をマークしており、3日の決勝は汚名返上と大会連覇を懸けてのレースとなる。

 夜空を見上げる表情にも余裕があった。準決勝2組に登場したボルトは競技場に入ってからも笑みを絶やさない。1組目でブラジルのベテラン、サンドロ・ディアナ(34)がフライングで失格したが、気にするそぶりは見せなかった。6レーンからスタートし、争う相手がいないと見るや150メートルで減速。残り10メートルでジョギングに近い速度まで落としたためにタイムは20秒31だったが「いつもの自分に戻った。依然として俺が世界のベストなんだ」と納得のいくレースになった。

 午前の予選でのスタート時の反応時間は、出場した53人中下から2番目となる0秒314。最も速かったスイスのレト・シェンケル(23)とは0秒176の差があった。カンフーのポーズなどでファンに対してはリラックスしていることをアピールしていたが、さしもの超人も必要以上に慎重にならざるを得なかったようだ。

 しかし、夜の準決勝では0秒207。きちんと修正したところに“リベンジ”にかける意欲と集中力がにじみ出ていた。100メートル決勝では走ることなく姿を消したものの、大手ブックメーカー、ウィリアム・ヒル社の200メートルでの優勝オッズでは1・06倍。ほとんど勝負にならないことを意味する倍率になった。

 世界記録で2冠を達成した前回ベルリン大会(09年)時とは母国をめぐる状況が激変している。通貨危機は欧州よりもジャマイカのほうが深刻。182億ドル(約1兆4000億円)に上る負債を抱え、ギリシャよりも先に破たんすると見られている。借金返済は国家予算の6割強。国民のあえぎは日々強まっている。

 日本がなでしこジャパンに震災復興への希望を感じたように、ジャマイカが心のよりどころにしているのがボルトの活躍だ。「100メートルでは残念ながら力を発揮する機会がなかった。でも200メートルは最も好きな種目。スタートがうまくいけば誰も俺には勝てない」と豪語した男が、260万人の国民が求めている“光”になる瞬間が迫ってきた。

 ≪対抗はジャマイカのホープ≫ボルトを脅かす1番手は同じジャマイカのホープ、ニッケル・アシュミード(21)で、今季世界2位の19秒95をマーク。予選、準決勝と好調を維持しているだけに侮れない相手だ。さらに100メートルで2位となっている米国のウォルター・ディックス(25)、同4位となったフランスのクリストフ・ルメートル(21)らが上位に顔を出しそうだ。

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