前門の虎!2日目の狼!朝青龍“天敵2連戦”

[ 2009年1月10日 06:00 ]

大相撲初場所初日から正念場を迎える朝青龍

 3場所連続休場中の横綱・朝青龍(28)が、大相撲初場所(11日初日、両国国技館)に進退を懸けて挑む。休場を勧める横審や協会幹部の声を無視し、強行出場する形となっただけに序盤で負けが込めば進退を問われるのは必至。初日に対戦する稀勢の里は昨年2勝2敗の苦手、2日目に当たる琴奨菊にも昨年春場所で敗れており、崖っ縁横綱が、いきなり大一番を迎えることになった。

【初場所特集


 7日の稽古総見で不安を露呈した朝青龍が下した注目の決断は、強行出場だった。この日、高砂部屋の稽古場には姿を見せなかったが、関係者によれば昨年の冬巡業で紹介された鍼灸(しんきゅう)師を鹿児島・奄美大島から呼び寄せ、自宅で左ひじの治療を受けていたという。
 出場については師匠の高砂親方(元大関・朝潮)にも相談しなかった。稽古場で横綱の動向について問われた高砂親方は「何も知りません。お答えのしようがありません」と素っ気なく語っただけ。師匠に話を通せば、休場を勧められる可能性もあっただけに、引退覚悟の出場決意だった可能性が高い。
 初日と2日目の取組を決めた審判部の放駒部長(元大関・魁傑)は「総見は調子が良くなかったけど本場所になれば違う」と期待を寄せた。だが、再起場所の初日にいきなり厳しいハードルが設けられた。復帰戦初日に対戦する稀勢の里は通算成績では8勝3敗だが、昨年に限れば2勝2敗と苦手にしている。特に昨年夏場所では同じ初日に対戦し、土俵上で尻もちをつく屈辱的な敗戦を喫した。7日の稽古総見でも、一度胸を合わせ簡単に差し手を許してあっさり寄り切られた。2日目に対戦する琴奨菊には昨年春場所の12日目に一方的に寄り切られ、連勝を11で止められた苦い記憶がある。ともにわずかな油断も許されない相手だ。
 過去に引退した横綱の多くは序盤でつまずき、3敗目を喫したあたりで土俵を降りる決断を下している。朝青龍も初日に負ければ苦しい展開になるのは確実。さらに、昨年の秋場所から徹底されることになった立ち合いの手つきの問題もある。朝青龍は持ち前のスピードを生かすために手つき不十分のまま立つことが多いが、放駒部長は「疑わしい場合は止める」と注文をつけた。
 自らまいた種とはいえ、まさに四面楚歌(そか)の状況で挑まなければならなくなった進退場所。引退が現実味を帯びてきたことで、九州場所で休場した時には「次に出てくる時は進退がかかる」と語っていた武蔵川理事長(元横綱・三重ノ海)もこの日は「進退は本人が決断すること。勝っても負けても見守ってあげないと」と発言を修正。言葉が優しくなったことが逆にその時が近づいていることを感じさせた。運命の初日まであと1日。朝青龍の相撲人生を懸けた戦いが、いよいよ幕を開ける。

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2009年1月10日のニュース