是枝監督映画「ベイビー・ブローカー」主演ソン・ガンホ 韓国人初の最優秀男優賞を受賞

[ 2022年5月30日 05:00 ]

カンヌ国際映画祭で男優賞に輝き、是枝裕和監督(左端)に祝福されるソン・ガンホさん(中央、AP)
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 フランス南部で開催された第75回カンヌ国際映画祭の審査結果が日本時間29日に発表され、是枝裕和監督(59)の韓国映画「ベイビー・ブローカー」(6月24日公開)に主演したソン・ガンホ(55)が最優秀男優賞を受賞した。韓国人俳優として初の快挙。是枝監督は「最高のゴール」と称えた。最高賞パルムドールにはスウェーデンのリューベン・オストルンド監督の「トライアングル・オブ・サッドネス」が輝いた。

 審査員が「ソン・ガンホ」の名前を告げると、是枝監督は韓国の国民的スターと熱い抱擁を交わした。スクリーンに大映しされた監督の目には光るものが映し出されていた。
 ステージに上がったソンは「偉大な芸術家である是枝監督に感謝します」と喜びのスピーチ。「シュリ」(1999年)や「殺人の追憶」(2003年)、そして19年にパルムドールを獲得したポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」などで日本でも人気の俳優。共演者や家族にも感謝の言葉を述べると会場が拍手で包まれた。

 是枝監督も感無量の様子。26日夜の公式上映が12分に及ぶスタンディングオベーションで迎えられたことから、18年の「万引き家族」以来、4年ぶり2度目の最高賞も期待されたが、そこには届かなかったもののキリスト教系団体が選ぶエキュメニカル賞も贈られ、2冠の栄誉となった。

 「ベイビー・ブローカー」は、親が育てられない子供を匿名で預ける「赤ちゃんポスト」を巡り、赤ん坊を売ろうとする2人の男と、赤ん坊の母親らの旅路を描く人間ドラマ。ソンはクリーニング店を営みながらブローカーで稼ぐサンヒョンを演じた。
 是枝監督にとっては「誰も知らない」の柳楽優弥(当時14歳)に続いての男優賞プレゼント。授賞式後に応じた日本人向けの取材で「自分の映画に出た役者が褒められるのが一番うれしい。自分が褒められると疑ってかかりますけど(笑い)」と話し、「彼の男優賞はこの作品にとっての最高のゴール、とても美しいゴール。ソンさんがムードメーカーでチームリーダーだったので、評価されて何よりです」と続けた。

 「中継映像で涙を流されている姿がアップになったが?」との質問には「泣いてないです(笑い)。でもうれしかったですよ。泣いてはいないですよ」と重ねて、逆に“感涙”を裏付けてしまった。

 「DECISION TO LEAVE」を出品した韓国のパク・チャヌク監督が監督賞を受賞するなど、今回もアジア作品が高く評価されたカンヌだが、「これをきっかけに、もっと日韓のスタッフとかキャストとかの交流が進むといいね」と是枝監督は前を向き、そして「英語圏でも撮ってみたい」と意欲を見せた。

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