KISS ライブ・シリーズ第1弾 心をつかむバンドの証明

[ 2021年7月16日 11:30 ]

KISS「オフ・ザ・サウンドボード:TOKYO 2001」ジャケット
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 【牧 元一の孤人焦点】イントロのギターの音を聴いただけで胸の高鳴りを感じる。米国のハードロックバンド「KISS」が奏でる「デトロイト・ロック・シティ」。今月14日に発売されたアルバム「オフ・ザ・サウンドボード:TOKYO 2001」の1曲目だ。

 このアルバムは2001年3月13日に東京ドームで行われた公演の模様を収録したもの。当時、ギターのポール・スタンレーは49歳、ベースのジーン・シモンズは52歳、ギターのエース・フレーリーは50歳、ドラムのエリック・シンガーは43歳。酸いも甘いもかみ分ける頃の演奏だ。

 ポールのボーカルのハイトーンがまず心を捉える。こんな高い声で歌っていたんだ!?と、いまさらながら驚く。「デトロイト・ロック・シティ」を初めて耳にしたのは1976年。今から45年前で、当時、ポールは24歳、自分自身は中学生。ハードロックの激しい曲だと思っていたが、今、改めて聴くと、思いのほか情緒的だ。過去への郷愁からそう感じるのか、または、最近よく聴く曲の数々が直線的だからそう感じるのか…。終盤のツイン・リードギターのメロディーがエモーショナルで、期せずして胸が熱くなった。

 3曲目の「狂気の叫び」は極めてポップ。「デトロイト・ロック・シティ」と同じアルバム「地獄の軍団」に収められた曲で、サビの♪Shout it,shout it,shout it out loud(叫べ、叫べ、大声で叫べ)…の繰り返しは心地よく、思わず一緒に歌いたくなってしまう。そのほか、「ラヴ・ガン」「ラヴィン・ユー・ベイビー」「ロックン・ロール・オール・ナイト」なども聴くだけで気分が高揚してくる。KISSがこんなに心をつかむバンドであることをすっかり忘れていた。

 彼らのことで思い出すのは、70年代にTBSで放送されていたバラエティー番組「ぎんざNOW!」だ。タレントのせんだみつおが司会を務め、一般人が笑いに挑む「コメディアン道場」などが人気で、洋楽を紹介するコーナーもあった。そこで何度も目にしたのが「ハード・ラック・ウーマン」のミュージックビデオ。美しい曲をピーター・クリスがドラムをたたきながらハスキーな声で歌うのが格好良く、このバンドのことがさらに好きになった。

 「オフ・ザ・サウンドボード:TOKYO 2001」は、今後リリースされていくライブ・アーカイブ・シリーズの第1弾。ピーターが歌う「ハード・ラック・ウーマン」「ベス」などが収録された作品もぜひ聴きたい。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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