永瀬王座「得るものかなりあった」 王将戴冠逃すも収穫

[ 2021年3月15日 05:30 ]

スポニチ主催 第70期王将戦7番勝負第6局第2日 ( 2021年3月14日    島根県大田市・さんべ荘 )

渡辺王将に敗れ、感想戦で渋い表情を見せる永瀬王座(撮影・中村 達也)
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 王将戦第6局が14日、第2日に指し継がれ、永瀬拓矢王座(28)が王将戴冠を逃した。頭を下げ、小声で「負けました」と完敗を認めた挑戦者は、しばし静かに盤上を見つめた。「いつも通り、一生懸命やったつもりです」。現役最強と目される王将に跳ね返され、終局直後はさすがに悔しさを隠せなかったが、前を向いたその表情には力は出し切った感があった。

 現・元タイトル保持者だけで占められた挑戦者決定リーグ。熾烈(しれつ)を極めた戦いを繰り広げ、最後は自らを含む“四天王”の1人、豊島将之竜王(30)をプレーオフで退けてつかんだ初の7番勝負だった。

 未体験の2日制、封じ手などに当初は戸惑いを隠せなかった。ただ、3連敗の崖っぷちから1勝を挙げた後の第5局では、移動中に空港でイチゴパフェを食べるなどリラックスし、連勝につなげるなど意地は見せた。

 今年度の勝数43は藤井聡太2冠=王位、棋聖=(18)と並ぶ1位タイ。一方で負数23も一番多く、68を数える対局数も1位という事実からは、タイトル戦を含む多くの棋戦で奮闘し続けた1年だったことが読み取れる。

 叡王戦7番勝負こそ持将棋となった2回の指し直しを含む異例の9戦まで戦った豊島に冠を奪われたものの、王座は死守。順位戦ではA級昇級を決めた。決して無敵ではない、だが、戦い続ける中で自らを鍛え上げていく――その姿は愛称の“軍曹”を体現しているようにも映る。

 渡辺との激闘を総括した際には「結果は残念だったとは思うんですが、得るものは個人的にはかなりあったシリーズ。それを今後に生かして行きたい」と収穫も口にした。

 結果的に王将の冠に手は届かなかったが、次の第71期は挑戦者決定リーグでも一番手に推される存在。戦い続け、さらに強さを増して1年後にこの舞台に再び帰ってくる可能性は十分ありそうだ。

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2021年3月15日のニュース