「ファミリーヒストリー」“まさか”のパンダ回の舞台裏 中国ロケも敢行「意外に早く野生に…」飼育員も涙

[ 2020年1月6日 06:30 ]

6日放送の総合テレビ「ファミリーヒストリー」は番組史上初となる動物、和歌山・アドベンチャーワールドのパンダ・彩浜の家族史を紐解く(下は左から司会の池田伸子アナウンサーと今田耕司)(C)NHK
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 著名人の家族史を徹底的に調べ、アイデンティティーや家族の絆を見つめるNHK総合のドキュメンタリー「ファミリーヒストリー」(月1回、月曜後7・30)は6日の放送で、番組史上初となる動物、パンダを扱う。和歌山・白浜のアドベンチャーワールドのパンダに迫る「パンダ・彩浜(サイヒン)~白浜パンダ一家のルーツ~」(後7・30~8・42)で、人間以外を題材にするのは2008年10月の番組スタート以来、初の試み。制作統括のNHKエンタープライズ情報文化番組部・小山好晴チーフプロデューサー(CP)に“異色の回”の舞台裏を聞いた。

 1歳のメスのパンダ・彩浜(サイヒン)は、アドベンチャーワールドのパンダ家族16番目の末娘。白浜で生まれたパンダたちの名前には皆、白浜の「浜」が付き「浜家」と呼ばれる。中国を除けば、これほど大きくなったパンダファミリーはないという。今回、中国各地も取材し、驚きの事実が明らかに。母方の曽祖母は保護された時、片目を失明するほどのケガを負い、衰弱していた。それが奇跡的に命を取り留める。この生命力の強さが子孫たちに受け継がれていた。飼育員たちは事実を知り、命の尊さ、責任の重さを改めて感じ、涙を浮かべる…。

 小山CPは「パンダの赤ちゃんが話題になった時、パンダのルーツをたどれないかと、スタッフたちと話したことがきっかけでした。動物園の動物だったら、ルーツがたどれるのではないかと思いました。すると、ブリーディングローンという制度があることを知りました。繁殖のために、動物園間で動物の貸し借りなどをしながら個体を増やすという取り組み。こうした貸し借りをする中で、先祖も複雑になっていると思い、パンダで調べることになりました。当然、パンダのかわいい姿も合わせて紹介できて、楽しい番組になると思い、企画しました」と企画意図を説明した。

 昨年11月に中国ロケを実施。動物番組を手掛けるディレクターも加わった。小山CPは「名前が似ていますし、顔が覚えられないことなどに苦労しました。これをどうするか、悩みました。そのため、いつもより多く家系図を入れています。また、意外に早く野生に行き着くと、それ以上さかのぼることができず、困りました。パンダも当然、個体差がかなりあります。さまざまな偶然が重なり、今につながるのは、人間と同じでした。また、飼育員の皆さんの情熱にも、改めて脱帽しました」と異色の回の舞台裏を明かす。

 「ルーツを調べるだけでなく、中国からパンダを借りて、繁殖を行うことにも、さまざまな困難があったことを紹介します。中国・成都にあるジャイアントパンダ繁殖研究基地の皆さんにも、ご協力いただきました。白浜の繁殖成功は中国側にとっても、重要な出来事。その思いをご紹介しています」

 通常は取材対象者がVTRを見守るが、今回はアドベンチャーワールドの飼育担当者。小山CPは「ベテランの方と若手の方にVTRを見ていただきました。彩浜のルーツを知って驚いたり、涙を浮かべたり。興味深くご覧いただきました」と収録を振り返った。

 小山CPによると、司会の今田耕司(53)も最初は「パンダで、どうやってやるの?」と、まさかだった様子。「今田さんが、彩浜の父で浜家の大黒柱である永明(エイメイ)のことを『強い女性が好みなんだな』と繰り返し言っており、飼育員の皆さんも頷いていました。そして、永明は27歳で彩浜の父親になりましたが、人間だと80歳を超えているとのこと。それについても、いたく感心していました」

 番組は13年10月11日の「藤原紀香~中国の大地に誓った父の覚悟~」が第51回ギャラクシー賞テレビ部門奨励賞を受賞。17年8月18日には、故ジョン・レノン(享年40)の妻で米ニューヨーク在住のアーティスト、オノ・ヨーコ氏(86)が異例のテレビ出演。ヨーコ氏は驚きながら「あなたたちのリサーチは素晴らしい。よくこんなに調べたわね」とスタッフにねぎらいの言葉を掛けたという。

 毎回、意外な家族史が明らかになるが、11年間の番組の歴史においても、今回のパンダは反響を呼びそうだ。人間以外の題材について、小山CPは「今後も機会があれば、チャレンジしたいです」と語った。

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2020年1月6日のニュース