「半分、青い。」北川悦吏子氏 坪内逍遙大賞受賞 美濃加茂市凱旋に感慨「岐阜に生まれ育ってよかった」

[ 2018年9月2日 17:00 ]

出身の美濃加茂市で行われた「第17回坪内逍遙大賞」授賞式に出席した北川悦吏子氏(右は伊藤誠一美濃加茂市長)
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 NHK連続テレビ小説「半分、青い。」(月〜土曜前8・00)の脚本を手掛ける北川悦吏子氏(56)が、岐阜県美濃加茂市が生んだ日本近代文学の先駆者・坪内逍遙の功績を称えて制定された「第17回坪内逍遙大賞」に選ばれ2日、美濃加茂市文化会館で行われた授賞式に出席した。

 北川氏は同市出身で、同市出身者の受賞は初。脚本家の受賞も初となった。登壇した北川氏は「私のような者が栄えある賞を頂いていいのかなと思います。あまり賞状をもらう人生ではなく、小学校のお話し方大会以来かな」と笑いを誘いながら喜びを語った。

 今作の第128話(8月28日)で最愛の妻・和子(原田知世)を亡くした弥一(谷原章介)の心情を「弥一さんは、まだ目のつくところに和子さんの写真を飾れないでいました。泣いてしまうからです。それでも毎日をきちんとクリアしていこうとしていました。しんどいね。大変だね。でも、日にち薬だよ。絶対、だんだん楽になります」(ナレーション・風吹ジュン)と書いたが、自身も難病(炎症性腸疾患、聴神経腫瘍)を患い「私も同じような(毎日をクリアしていく)時期を病院で過ごすことが多く、ある種、私の実感でした」と回顧。今回の受賞は「そんな中でも前に見える光を見つけたいと思って、ずっと書き続けてきました。投げやりになる時もありましたが、どうにか自分で自分の機嫌を取りながら、前を見て明日を見て1日1日クリアしてきたご褒美なのかなと思っています。こういう賞を頂いたからには、また前を向いて頑張りたいと思います」と決意を新たにした。

 授賞式後にトークショーも開かれ、俳優の谷原章介(46)、制作統括の勝田夏子チーフプロデューサー、チーフ演出の田中健二氏も参加。観客800人に対し、2778人の応募がある盛況となった。

 第92話(7月17日)でヒロイン・鈴愛(永野芽郁)の結婚式のビデオメッセージを出演者1人1人のアドリブにしたのは「(キャストを一度に集める)スケジュールも(式場を借りる)お金もないから(笑)」など、北川氏は数々の執筆秘話を披露。昨年11月には母校・加茂高校でロケが行われ、自身を投影した作品に。最後は「朝ドラを書くことが決まって、自分の故郷を書くのが恥ずかしかったんですが、勝田さんと健二さんが『北川さんの故郷で書いたらいい』とおっしゃってくれて。今は、歩いて数百メートルのところに実家があるような場所でトークショーができて、皆さんに来ていただいて、本当によかったなと思っています。(早大進学まで)岐阜に生まれ育って、こうやって戻ってこられて、よかったなと思います」と感慨深げに語り、地元凱旋を締めくくった。

 朝ドラ通算98作目。フジテレビ「素顔のままで」「ロングバケーション」「空から降る一億の星」やTBS「愛していると言ってくれ」「ビューティフルライフ」「オレンジデイズ」など数々の名作を生み“ラブストーリーの神様”と呼ばれるヒットメーカー・北川氏のオリジナル脚本。岐阜県と東京を舞台に、病気で左耳を失聴した楡野鈴愛(にれの・すずめ)が高度経済成長期の終わりから現代を七転び八起きで駆け抜ける姿を描く。最終回は今月29日。

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