[ 2010年10月15日 06:00 ]

題名役を好演するミヒャエラ・カウネの背景にはクリムトの名画が

 まず私が驚かされたのは、出演者ひとりひとりに本当に細かく演技が付けられていたことです。歌っている歌手だけでなく、その言葉を受けて主要キャスト、その他大勢の人たちもしっかり反応し、多彩な表情を浮かべたり、臨機応変の動きを見せていました。演者の動きの隅々にまで演出家の意図がこれほどまでに反映されているステージは、演出主導のオペラ上演が全盛の現在でも滅多に見られるものではありません。フィリップ・アルローの手腕の確かさと意気込みが伝わってきました。

そのアルローの基本コンセプトですが、プログラムに掲載された演出ノートによると時代設定をウィーンが衰退していく1860年代から、大恐慌時代の1930年へと移したそうです。なぜ現代に引き寄せたかったのかというと、私たちの生きている現在に近くて、類似点があるからだと説明しています。

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2010年10月15日のニュース