小室氏の実刑回避の陰に、難病青年の嘆願書

[ 2009年5月12日 06:00 ]

 執行猶予付きの判決が出た小室哲哉被告。大阪地裁の杉田宗久裁判長は「被害弁償を完ぺきにしている」など主に3つの判決理由を挙げたが、難病の青年らが書いた減刑嘆願書の存在も大きかった。小室被告も記者会見で「必ず僕の音楽を好きになって良かったと思えるようにしないといけない」と、その重さを痛感していた。

 判決理由を杉田裁判長は(1)場当たり的犯行で詐欺の発案者は共犯者(2)被害弁償を完ぺきにしているのは詐欺事件において特筆すべきもので真摯(し)に反省している(3)エイベックスの強い協力態勢は被告の将来の更生を期待させる――と説明。その上で「ただちに刑務所に送り込むことに社会的意義を見いだせない」と結論づけた。
 著作権の制度上の問題を悪用した犯行に「あまりにも狡猾(こうかつ)。自らが作った歌の数々を詐欺の道具に使ったことはあまりに嘆かわしい」と断罪。一方で「音楽の世界や社会的貢献をしたことは正当に評価すべき」とし、筋肉が次第に衰えていく難病「筋ジストロフィー」の患者など、ファンが寛大な処分を求めて署名した減刑嘆願書の存在について触れた。
 弁護人によれば、知人を含め署名したのは6000人以上。「ファンの方々が自然発生的に集めたもので(弁護士の)事務所や親族へ直接送ってきたものもあった。便せん5枚以上の長文もありました」という。
 阪神大震災の被災地に楽曲の著作権を寄付し、国連薬物撲滅計画にも貢献してきた小室被告。昨年はじめ、筋ジストロフィー症で長期療養している青年らが子供の頃からの大ファンでバンドを組んだと知り、大分県内の病院で一緒にライブを行った。小室被告のピアノ伴奏でメンバーはギターを弾いて歌い、同じ病棟の患者も詰めかけた。
 嘆願書の重みをかみしめながら、小室被告は「大きな罪を犯したにもかかわらず、それでもまだ頑張れと言ってくださる皆さんがいる。ファンの皆さまの期待をこれ以上裏切ったらどうしようもない。精進して一生懸命働きたい」と話した。

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2009年5月12日のニュース