用具担当一筋36年 オリックス球団職員の松本正志さんが明かすイチローらが宿舎で守ってきた伝統とは

[ 2024年2月2日 08:00 ]

松本正志氏
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 オリックスは2日に宮崎でキャンプインを迎える。現役引退直後の88年から阪急、オリックスで用具担当一筋36年の松本正志さん(64)は、この春季キャンプを最後に退職する。

 阪神大震災から29年として当時を語ってもらう取材の場で、松本さんには用具担当にかける思いも話していただいた。「宮古島(キャンプ)の時は1月の10日過ぎに行って、15、16年ぐらい前までは業者も使わずに僕らが土を入れて、ブルドーザーでならして、石取りしてグラウンドを作っていた」。用具担当36年の間に築かれた遠征先のホテルの担当者や業者との関係が、松本さんの生きがいであり仕事としてのやりがいだった。

 遠征先のホテルで松本さんが選手に昔から徹底させていることが、野球用具や荷物をホテルの部屋前に置くのではなく、自分でホテル下に待機してある球場まで運送するトラックの元まで運ぶこと。他球団では部屋の前に荷物を置いておくのが一般的だという。「ホテルの人は、そこまでやってもらったら助かりますと。ほかの球団と同じホテルに泊まっていても、オリックスさんは教育がちゃんとしてますとはよく言われている」。かつて若手時代のイチローが一度だけ、そのルールを破ったことがあったと松本さんは話す。

 「ファンが殺到して、ホテルの下に持ってこれないときがあった。イチローは荷物を出さずに、そのまま業務用のエレベーターで裏から帰って。“黙って帰るのはよくない。言ったらこっちがやってあげるから”と。そうしたらイチローも次の日からすぐ下に持ってくるようになった」

 ホテル従事者の負担滅に加えて、自分の荷物を大事にするという思いも込められた伝統は、中嶋監督の現役時、イチロー、田口の時代から、現在の山本由伸、山下舜平大の時代まで受け継がれてきた。キャンプイン前日で自主練習だった1日の朝、選手や首脳陣がまだ到着する前に松本さんの姿はSOKKENスタジアムにあった。「引き継ぎの子は、もう真面目にやってくれたらいい」。選手らに守らせてきた伝統と用具担当への誇りを、最後の仕事場となる宮崎キャンプ中に後輩らへと引き継ぐ。
(記者コラム・阪井 日向)

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