マー君、楽天復帰決断の背景に何が コロナ、悪化する労使関係…2年後メジャーに戻っても価値不変

[ 2021年1月29日 06:15 ]

田中将大 楽天復帰

楽天復帰が決まった田中(AP)
Photo By AP

 田中が楽天復帰を決断した背景には、何があったのか。大リーグ取材歴25年の奥田秀樹通信員(57)が、舞台裏に迫った。

 田中の楽天復帰はいい選択だと思う。今のメジャーはそれほど環境が悪い。新型コロナウイルスに加え、労使関係が94年のストライキ時を思わせるほど悪化。昨季はコロナ禍による短縮シーズンを何試合にするか、年俸をどれだけ払うかで話し合ったが合意できず、最後の最後にコミッショナー権限で60試合と一方的に決めた。お互いに相手を信用していない。

 その背景にあるのが、21年で失効する現在の労使協定。選手たちは自分たちに不利な協定だと長く不満を訴えている。このオフ、田中のヤンキース再契約の妨げになったぜいたく税もそうだ。だから組合は一歩も引かないし、オーナー側もコロナを理由にして「お金がない」と言い張る。オーナーたちの結束は固く、お互いにお金を使いすぎないようにしている。ごく一部のチームを除いて、本気で勝ちにいく姿勢が全く見られない。問題なのは、両リーグ統一のユニバーサルDH制など、労使間でどんな簡単な議題であっても駆け引きの材料となり、一向に進まないことだ。

 コロナ禍で今季も開幕は遅れる可能性がある。仮に無事に開幕を迎えたとしても新協定の話し合いがもめれば、シーズン中のストライキやロックアウト(施設封鎖)の可能性があり、シーズン100試合もできないかもしれない。そうなれば、投手のイニング数は大幅に減る。2年連続で普通の環境で野球ができないと、長い目で見てキャリアにとってマイナスになるだろう。

 そう考えれば、落ち着かない米国でプレーするより、熱狂的な楽天ファンの前で日本一を目指す方がプラスになる。まだ32歳と若いし、メジャーではトップクラスの投手の評価を得ている。2年契約終了後に再びメジャーに戻るとしても、価値は下がらないと思う。ソフトバンクで復活したムーアもメジャー球団と交渉中。今や日本でプレーすることはマイナスにならない。

 22年には新しい労使協定が結ばれ、メジャーも通常の状態に戻る。今回の楽天復帰でメジャーへの扉が閉ざされたわけではない。(奥田秀樹通信員)

続きを表示

2021年1月29日のニュース