堂々自己表現 ロッテ・朗希 松井秀喜氏に通じる強くてブレない「言葉」

[ 2020年5月20日 06:30 ]

ロッテ・佐々木朗
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 最速163キロで「令和の怪物」と称されるロッテのドラフト1位・佐々木朗希投手(18)は高卒新人ながら節目で数々の印象的なコメントを残している。プロ入りからスポニチ紙面に掲載された「朗希の言葉」を振り返りながら、今年1月にZOZOマリンで行った球団新人研修会では講師を務めた「LOCON株式会社」代表取締役で金沢工大虎ノ門大学院客員准教授の石井大貴氏(37)に、その印象を語ってもらった。(構成・横市 勇)

 いい意味で遠慮がない。それが佐々木朗希選手の第一印象です。「海外で大活躍する」という明確なビジョンがすでにある。見ている視点、視座、視野が周囲と違うなと感じました。

 企業やアスリートへの研修をしていると、多くの人が「チーム、組織のために」といった枠を超えられません。自分自身の「ビジョン」「生きる目的」を言葉で表現したり、体現できる人はとても少ないのです。ところが、彼はビジョンや目標を、球団社長らがいる研修の場で堂々と表現できます。これからの時代は、一人一人が個性を発揮することがチームや組織にとってもプラスになるはずです。皆が彼のようにどんどん自己実現を目指すような社会になればいいなと思います。

 今は未曽有の事態。誰もが不安を覚え、悩んだり迷ったりしてしまいがちです。しかし、考えてみれば、自分にコントロールできないことで悩んでも仕方がない。今は落ち着いて自分ができることに集中するしかありません。佐々木選手からは、そのような落ち着いた心構えを感じます。そして、そのぶれない強さは、松井秀喜さんにも通じるものがあると思います。

 松井さんは「人間万事塞翁(さいおう)が馬」という言葉を大切にしているそうです。簡単に言うと、「運命を受け入れる」との意味。松井さんだって、ケガに悩んだり、ワールドシリーズでMVPを獲得した直後にチームの構想から外れるなど、大変な経験をしました。

 それでも、球団を移籍しながら自分にできることを愚直に追求して最後までやりきった。その姿は私たちに大きな感動を与えてくれました。佐々木選手には、そんな松井選手に似た雰囲気を感じるのです。

 佐々木選手は野球で人に夢を与えられるような選手になると思う。本人も「地元やこれまで支えてもらった人たちに恩返しをしたい」と言っていました。東日本大震災を経験。野球でも昨夏の岩手大会決勝で登板しなかったことが社会問題となりました。いろいろな経験をしているからこそ、それを体現できると思います。

 研修では「プロフェッショナルとは何か」を話しました。プロフェッショナルと呼ばれる人には、特徴があります。決して自分のことをプロとは言わず、愚直に成長をやめないのです。イチローさんだって、いまだにアマチュアの中に入って成長しようとしている。(2000安打をマークして引退した)福浦さんも26年目のインタビューで「バッティングは分からないことだらけ」と言っていました。

 そういう姿勢が周りに勇気を与える。あの人がまだ向上しようとしている。ならば、自分だってやらなきゃいけないと思う。彼にもそういうメッセージをプレーや言動で示してほしい。そういうものを多くの子供だったり、学生だったり、生きる意味を見失ったサラリーマンたちに伝えてほしい。そうなれば、日本は元気になると思います。

《佐々木朗の言葉》
 ☆1.8 さいたま市内の寮に入寮
「どういった一年になるかは分からないけど、いろいろなことに慣れて、経験を積んで充実した一年を過ごせればいい」

 ☆1.11 新人合同自主トレ初日。即席サイン会に約1000人の行列も、バスの出発時間が迫り、201人で終了
「自分がもっと上手にサインできれば、もっと多くの人にサインできた」

 ☆1.19 ZOZOマリンでの新人合同自主トレは最終日。練習後はファンとハイタッチ会
「ファンと触れ合って、改めて頑張る理由ができた。1軍にいないと、ここに戻って来られない。ここでプレーしたいし、ここでプレーしなければいけない」

 ☆1.31 キャンプイン前日。児童養護施設を訪問
「(子供から憧れられる)そういう存在であり続けるためにも頑張っていきたい。機会があれば、また来たい」

 ☆2.10 元監督である有藤通世氏との対談で、メジャー挑戦について聞かれる
「タイミングがあるならば、年齢問わず行きたいです」

 ☆2.13 キャンプ最終日に初めてブルペン入り、周囲が絶賛する25球にも
「投げた感覚は良くなかった。全体的に駄目。納得できる球はなかった」

 ☆3.1 約2カ月ぶりの帰郷。母校・大船渡の卒業式に出席
「初めて地元から遠く離れて生活を送り、地元の素晴らしさ、ありがたみを感じることができた。僕にとって一番の場所」

 ☆3.4 新型コロナウイルスの影響で学校に行けない子供たちにメッセージ
「やることが与えられない時に自分で考えてやることが求められる。その方が野球だったり勉強だったり、伸びると思う。時間をうまく活用してほしい」

 ☆3.11 津波で父を亡くした東日本大震災から9年
「今、あることが当たり前じゃないということを思った。たくさんのものを失って改めて気づいたことがたくさんある。これから後悔しないようにして生きたい」

 ☆4.6 屋外での自主練習が自粛だった期間を振り返る
「今は全てにおいて我慢するとき。やれることを見つけて一日を大事に過ごしたい。野球ができる時が来たら、しっかりとしたパフォーマンスを見せられるようにするだけ」

 ☆5.5 こどものに日に合わせ、自身の少年時代を振り返りながら子供たちにメッセージ
「子供の時のボクは恥ずかしがり屋でした。野球のときだけ人が変わるというか大勢の前でも普通に投げることができました。自分で思っているほど人は見ていない。ノビノビとプレーをしようと考えたら楽になりました」

 ☆5.9 「母の日」を前に小学校4年時に母・陽子さんに100円のタオルハンカチを贈った思い出を披露
「今、こうやってプロ野球で野球ができているのは母のおかげなんだと思っています。本当に感謝をしています。ありがとう。100円なので、“喜んでくれないかなあ”と思ったのですが、とても喜んでくれたのを鮮明に覚えています。プレゼントは値段ではなくてプレゼントをするという気持ちが大事だと思いました」

 ▽朗希と石井氏 1月11日、新人合同自主トレ初日の練習前に、ZOZOマリン内で行われた球団主催の「新人研修」で対面。「プロフェッショナルとは」をテーマに石井大貴氏が講師を務め、異例の「握手競争」から始まった。報道陣も巻き込んで、2分間で何人と自己紹介して握手できるかを新人7人で競争。佐々木朗は20人と握手を交わし、「握手をした後は、相手との距離感が縮まった」と感想を語っていた。

 ◆石井 大貴(いしい・ともたか)1982年(昭57)7月25日生まれ、東京都出身の37歳。慶大卒、慶大メディアデザイン研究科後期博士課程終了。TBSテレビに15年間勤務後、知育事業を手掛ける「LOCON株式会社」を設立し、代表取締役を務める。今春からは金沢工大虎ノ門大学院客員准教授に就任した。

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