敵地でも勝者へ向けられた惜しみない敬意 どうなる今季のプロ野球ラストシーン

[ 2018年10月30日 10:30 ]

敵地札幌ドームでの優勝を決め、胴上げされる西武・辻監督
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 ちょうど1カ月がたった。9月30日。西武が10年ぶりのリーグ優勝を決めた。舞台は札幌ドーム。試合に敗れての優勝決定だった。微妙な空気になってもおかしくない状況。だが、札幌ドームはそうならなかった。

 マジック1で迎えた敵地での日本ハム戦。リードされたまま8回の攻撃を終えた。一方、ヤフオクドームでソフトバンクがロッテに敗戦。その瞬間に優勝が決まり、スタンドからも選手に「おめでとう」と声がかけられた。リードを許したまま試合終了。だが、ここからの札幌ドームのムードは最高だった。

 胴上げのために一塁ベンチからゆっくりと歩み出した西武ナイン。敗戦に少々、バツが悪そうな表情が多かった。その時、BGMとともに日本ハムファンが手拍子を初めた。西武の選手がマウンド付近に到着するまで「優勝おめでとう。さあ、胴上げ楽しんで」と背中を押すような温かい手拍子が続いた。本来ならリーグ優勝を逃した日本ハムファン。悔しくないはずがない。それでも、目前で決まった西武の優勝を素直に称える、リスペクトがそこにはあった。

 転じて21日のCSファイナルS第5戦。本拠地・メットライフドーム。西武は2勝4敗となり敗退が決まった。その試合前の打撃練習。ソフトバンク・デスパイネがブーイングを浴びていた。原因は前日の第4戦。初回に捕手の森が、デスパイネの振り切ったバットで左手首を叩かれて負傷交代したことが原因だった。第4戦は打席に入る際に、ブーイングが繰り返された。だからこそ、試合後のセレモニーが気になった。

 日本シリーズ進出を決めたソフトバンクナインが、右翼席へあいさつ。続けて、左翼席の西武ファンにもあいさつに向かった。すると、メットライフドームの西武ファンからは惜しみない拍手が巻き起こった。日本シリーズ進出を逃した悔しさや、10年分の思いとは別に相手に表された敬意。札幌ドームと同じ光景だった。

 30日。日本シリーズは福岡を舞台に第3戦が行われる。勝負が決まるのは福岡か、広島か?今季のプロ野球の最後のシーンがどんな空気に包まれるのか、注目している。(記者コラム・春川 英樹)

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2018年10月30日のニュース