【森田尚忠の研球】メッセに首振られた原口 経験を積めば積むほど苦悩が増す

[ 2016年8月13日 09:30 ]

<神・中>ベンチに戻るメッセンジャー(右)と話す原口

セ・リーグ 阪神4―2中日

(8月12日 京セラD)
 阪神・メッセンジャーは1度、首を振った後、小さくうなずいた。4回2死無走者で打席にはビシエド。2ストライクから選択した4球目はカーブだった。結果は空振り三振。チームとしては最高の結果でも、捕手・原口の心境は複雑だったかもしれない。

 「一番は投げたいボールを投げさせてあげることです。でも、メッセの考えていることが広すぎて、まだまだ難しい部分もある。本来なら自分が引っ張らないといけないですが、今はメッセに引っ張ってもらっているのが現状です」

 試合前、メッセンジャーとのコンビネーションについて、原口は率直な思いを明かしていた。初めてコンビを組んだのが7月18日の巨人戦(甲子園)。同戦こそ8回1失点にまとめたが、その後は痛打されるシーンも目立った。計5試合の通算防御率は3・82。この日は8回1/32失点で10勝目をアシストしたが、やはり追い込んでからは首を振られるシーンが目についた。助っ人右腕の今季防御率が3・07であることを思えば、まだまだ改善の余地は残される。

 ただ、サインに首を振られること自体、原口が正捕手の座を目指す上では決して欠かすことのできないプロセスの一つでもある。首を振られて、初めて気づくこともある。この日も含めた全5試合は、その繰り返しだっただろう。矢野作戦兼バッテリーコーチは言う。

 「バッテリーで“これで良い”というのはないから。でも、最初は何も分からない状態からスタートして(リードしていくことが)難しいと感じられるようになるのも一つの成長。迷ったときに“原口に任せてみよう”と思ってもらえるように、なっていかないと」
 もちろん、メッセンジャーもいたずらに首を振るだけではない。冒頭の場面だけではなく、首を振り、自らの意志で投じたボールはことごとく中日打線を手こずらせた。打者を打ち取ったという事実こそが、無言の説得力となり、原口にとっては何よりの教材となる。

 「(投球は)全部が良かった。でも、いろいろと反省する部分はありますね」

 助っ人右腕の好投をたたえる一方で、原口は自らの足元を見つめることを忘れなかった。経験がなければ務まらないポジションは、経験を積めば積むほど苦悩も増していく。原口の葛藤は、まだまだ続く。

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2016年8月13日のニュース