「考える人」由伸監督 過渡期の巨人、時間かけて立て直してほしい

[ 2016年6月21日 10:20 ]

ベンチで考えをめぐらせる巨人・高橋監督

 ロダンの「考える人」。ベンチで指揮を執る巨人の高橋由伸監督の姿を見て、そう連想してしまう。腕を組み、常に考えを巡らせている。41歳の青年監督。若いから座らないようだが、持病の腰痛がちょっと心配だ。

 「5割なので、いいのか悪いのかと言えば、どちらとも言えないですけどね…」。交流戦を9勝9敗で終えた感想。歯切れが悪い。5連勝の好スタート。12、14年に交流戦で優勝しており、「隔年周期」と期待されたが、その後は5連敗を喫するなど、沈んでいった。振り返れば、開幕時も4連勝の好スタートを切ったものの、徐々に下降し始め、交流戦直前には7連敗を喫した。交流戦でも勝ち星を伸ばせず、借金1。気付けば、広島の独走を許している。好不調の波が激しく、連勝、連敗の「ジェットコースター野球」は安定感がない証拠であり、強い印象が持てない。

 巨人は過渡期を迎えている。リーグ3連覇した14年ごろから、投打ともに主力選手の成績が落ちている。昨年は2位で4連覇を逃し、原辰徳監督が辞任した。高橋監督は引き継いだことで現役を引退することになり、「スーパーサブ」の井端も後を追うようにユニホームを脱ぎ、コーチに就任した。昨オフの大きな補強と言えば、メジャー122本塁打のギャレットとロッテから移籍したクルーズ。しかし、4番を任されたギャレットは期待外れで、クルーズは故障で離脱。昨季2人で計21勝を挙げたマイコラスとポレダも故障でいない。先発はエースの菅野頼みで、どう考えても、戦力ダウンしている。

 あの時と似ている。第2次原政権が始まった06年だ。5月中旬までに貯金を14まで伸ばした。独走の気配すらあったものの、6月に8連敗と10連敗。7月にも9連敗を喫し、借金はあっという間に2桁を超えた。この時も世代交代の時期に差し掛かり、戦いぶりに安定感はなかった。7月の大型連敗中、当時の渡辺恒雄球団会長を直撃した。「バタバタ慌てて補強してもダメだ」と、アリアスらを獲得したフロントの戦力補強に不満を漏らした。その上で、早々と原監督の来季続投を明言。「この1年、2年、3年、長期戦だ。すべて長期計画を立てて焦らず、ゆっくりやらせる」と言った。同年は4位に終わったが、翌07年からリーグ3連覇を達成した。

 高橋監督は投打にわたって、若手にチャンスを与え続けている。もちろん、レギュラーに定着するまでに時間がかかることは承知の上。それでも勝利を追求しながら、来季以降も見据えて育成面を重視しているのだろう。原前監督の第2次政権と同じく、長期政権は揺るがない。「育成3カ年計画」。じっくり時間をかけて、巨人を立て直してほしい。(記者コラム・飯塚 荒太)

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2016年6月21日のニュース