五輪競技復活願う熊崎コミッショナー、情熱の源は「前畑ガンバレ」

[ 2015年7月5日 10:30 ]

熊崎コミッショナー

 「俺はな、前畑さんと泳いだことがあるんだ」

 プロ野球の熊崎勝彦コミッショナーが言った。前畑さん、とは36年ベルリン五輪女子200メートル平泳ぎ金メダリスト。NHKのアナウンサーが「前畑ガンバレ、前畑ガンバレ」と厳正中立の報道原則を忘れ、実況したことで有名だ。

 熊崎氏の故郷、岐阜県益田郡(現下呂市)を水泳教室で訪れたという。73歳の熊崎氏が高校生の頃で55年以上も昔だが鮮明に覚えているらしい。

 64年の東京五輪開催時は22歳。「東京って言えばマラソンだな。円谷幸吉……。あの人は自死してしまったんだよな。あとはバレーだな。東洋の魔女」。その活躍は法曹界を目指す学生の胸にも深く刻まれたようだ。

 熊崎氏が最初に脚光を浴びたのは東京地検特捜部長時代だ。リクルート事件や当時自民党副総裁だった金丸信の脱税事件に関わった。今は「最後のご奉公」と野球界の発展に尽力する。

 「どうだ。今年のペナントレースは面白いだろう」。顔を合わせるたびに聞かれる。「そうですね」と答えると、検察時代は数多の大物を震え上がらせた強面をくしゃっと崩して「そうだろう、そうだろう」とうなずく。今は野球が我が子のように可愛いらしい。

 熊崎氏の目下の願いは野球・ソフトボールの20年東京五輪での実施競技復活だ。伝説の前畑さんと泳いだ感動は今の情熱の源。スポーツに対する子供のような憧憬と法に生きる人間の厳格さを併せ持つ球界のリーダー。五輪候補のライバル競技には、記者が九州勤務時代に毎朝6時起床でのめり込んだサーフィンもある。だが、今はサーフィンへの愛着も厳正中立の原則も忘れ、「熊崎ガンバレ」が本音だ。

 ◆君島 圭介(きみしま・けいすけ)1968年(昭43)6月29日、福島県生まれの47歳。ダイエー(現ソフトバンク)担当など8年の九州勤務と野球デスクを経て、現在は日本野球機構(NPB)担当4年目。64年東京五輪マラソン銅の円谷幸吉は高校の大先輩。

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2015年7月5日のニュース