松井氏 しみじみ「球場に入った瞬間から泣きそうでした」

[ 2013年7月30日 06:00 ]

<ヤンキース・レイズ>引退式後、最後の“ピンストライプ姿”で始球式を行った松井氏。右は先発・ヒューズ

松井氏引退式

 この景色が好きだった。現役時代に何度も浴びたヤンキースタジアムの大歓声。ゴルフカートに乗り、中堅左のブルペンから登場した松井は笑顔で手を振り続けた。これまで味わったことがない感動が込み上げてきた。

 「球場に入った瞬間から泣きそうでした。言葉にならないぐらいの感動と、あらためて幸せな野球人生だったと思う」

 この日はヤンキースの今季ホーム55試合目。松井のかつての背番号にちなんで引退式典が行われた。先着1万8000人には松井の「バブルヘッド(首振り)人形」が配られた。多くの名選手を輩出してきた名門球団でも、1日契約を結んで引退式を行うことは異例。それだけ松井はチームに、そしてニューヨークに愛されていた。

 カートは本塁付近に到着。そこには机が置かれていた。式典前の午前11時17分に1日限定のマイナー契約を結んだ松井は、午後0時52分に約4万人のファンと家族が見守る前で引退を確認する書類にサインした。1時間35分の現役復帰。09年11月4日、ワールドシリーズMVPのトロフィーを掲げた同じ場所で、現役生活に正式にピリオドを打ち「生涯忘れられない日になる」としみじみと語った。

 始球式では上半身だけユニホームを着用。国民栄誉賞を受賞した5月5日の東京ドームでは、巨人・長嶋茂雄終身名誉監督に当たりそうになるほど大きく外れたが、この日は本塁ベース上を通ってミットに収まった。最近はヤ軍傘下マイナーで打撃投手を務めていただけに「思ったより少し距離が長かった。でも届いて良かった」と笑った。

 式典の途中、ヤンキースタジアムには雨が落ちてきた。それはヤンキースファンの涙雨だったのかもしれない。

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